第843話最善の道

「そーちゃん、話って?」


「私のそーくんに手を出そうとしておきながらよく私のことをスルーして会話を話し始められるね」


 一応結愛にはメールで初音がいることも伝えていたんだが・・・


「だって虫と話すだけ時間の無駄じゃない?どうせ私たちはんだから」


「まさかあの桃雫結愛に共感する時が来るとはね、それに関しては私も同意だよ、そーくんもこの女くらいそのことを分かってくれてたらそもそもこんなことは起こり得なかったんだけどね」


「こんなこと・・・あぁ」


 結愛は今の初音の発言で全てを理解したらしく、少し引き締まった表情になった。


「そっかそーちゃん、バレちゃったんだね」


「バレたというか・・・悪い、正確にはバラしてしまったんだ」


「問い詰められてバラさないといけない状況になっちゃったんだったら仕方ないよ」


 結愛は俺が犯してしまったことを快く許してくれているようだ。

 ・・・俺はこれから結愛の顔をおそらく歪めてしまうことになるのに。


「ていうか、私に隠れてそーくんのことたぶらかしてたくせに、よく今まで平気な顔してたよね」


「私がそーちゃんのことを好きなんだからそんなの仕方ないよね」


「もうすでに彼女がいるのに誑かすってどうなの?そのせいでそーくんに浮気なんていう業まで背負わせて・・・自分のしたこと分かってる?」


「お、落ち着いてくれ2人とも!今日は2人が喧嘩するんじゃなくて、俺が言わないといけないことがあるからこの場を作ったんだ」


 まずは2人に喧嘩をやめてもらわないと、話が進まない。


「そうだったねそーくん、早く言ってあげてよ」


 初音は俺が結愛のことを振ると思っているが・・・それは

 ・・・正確には違わないんだが、俺がこれから言うことは、それよりもさらに大きなスケールの話だ。


「・・・何?そーちゃん、もし私を振って浮気をやめるっていう話なら───────」


「違う、浮気をやめるんじゃない」


 俺は結愛の言葉を否定する。


「・・・じゃあ何かな?」


 この言葉を発することにはとても大きな勇気が必要だが・・・それはもうさっき心の中で済ませた、あとはこれを言うだけだ。


「俺は・・・2


「・・・え?」


「そーちゃん・・・?どういうこと・・・?」


 いつもなら俺の考えや発言を先読みして俺が何をしたところであまり驚かないこの2人だが、今回ばかりは流石に予想外らしくかなり驚いている様子だ。

 だが・・・これが今の俺にとって、最善の道だ。

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