第837話逆効果
「さぁ、お兄様・・・!」
「ま、待て!違うんだ霧響、ここまでしておいて悪いんだが、俺はそんなつもりじゃ───────」
「わざわざ2人きりの状況を作り私にアプローチをしてきたのはお兄様です、今更逃げるとおっしゃっても遅いですよ」
最低な行為をして嫌われ、霧響の理想の人物から離れるという作戦だったのにそのせいで何故か逆に変な誤解を生んでしまっている。
「ほ、本当に違うんだって、俺があんな最低なことをしたことには訳があるんだ」
そもそもあんな最低なことをしたのにどうして霧響は俺とそういう雰囲気に持っていこうとしているんだろうか。
「・・・最低なこと?」
「・・・な、なんでそこで疑問に思ってるんだ?」
「いつお兄様が私に最低なことをしたんですか?」
「・・・え?」
俺が行った最低な行為というのは直近では一つしかないだろう。
「さっきキッチンでだ」
「キッチン・・・?」
「わざわざ言わせる気なのか・・・?だから、俺が、霧響の胸部を・・・さ、触っただろ?」
「はい、それが?」
「それがって・・・」
話が噛み合っていない、どころかもはや違う話をしているんじゃないかと感じるほどに話が合っていない。
「それはお兄様がようやくしてくださった私へのアプローチ、嬉しいことではないんですか?」
「・・・は?・・・は!?」
アプローチってそういうことなのか!?
・・・確かにそういうこと以外に受け取り方はなかったがそうか、そう捉えられてしまうのか。
・・・え?じゃあ俺が最低な行為だと思って行ったことはもしかして。
逆効果だった?
「どのような理由であろうと、お兄様は女性の大事な場所を触ったのです、その責任は取っていただかなくてはなりません、もうこれは、お兄様が選択できる内の話ではなく、義務になっているんです」
「ぎ、義務・・・?」
「お兄様が私の大事な場所を触ったのであれば、私がお兄様の大事な場所を触ってもいいはずです、でなければ釣り合いが取れません」
「いや・・・その通り、だが、初音に聞いてくれればわかる、本当にそういった意図じゃないんだって」
「・・・確かにお兄様にしては思い切りがいいことをしてきたとは思いましたが、ともかくお兄様が私の大事な場所を触ったことは事実です」
その揺るぎない事実がある限りは俺としてもどう言い分を聞き入れて貰えばいいのか考えるのが難しくなるな。
そんな風に悩んでいると、部屋のドアが開いてスマホを片手に持っている初音が部屋に入ってきた。
「あ、そーくん、ここに居たんだ、キッチンに行ったんじゃなかったの?」
「あぁ、その・・・色々あって」
「色々って、そのベッドの上で?」
「ち、違う違う!」
「それはこれからです」
霧響が余計なことどころの騒ぎではないことを言い出した。
「ちょっ!変なことを言うな!」
「事実です、お兄様が私の大事な場所を触ったことも含めて」
「大事な場所を触った・・・?何それ」
霧響は一部始終を初音に話した。
そしてそれを聞いた初音の反応は・・・
「・・・は?」
という怒りの声を俺に向けてくることだった。
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