第835話霧響のため
「無理だね」
「無理だよ」
「無理じゃない?ってか無理でしょ」
天銀は用事があって忙しかったらしいが、それ以外の初音と結愛と小姫さんを呼ぶことができ、リビングにて今の霧響の状況を相談してみたが即座にそう返答された。
「・・・え?」
俺はそれに絶句する。
三人寄れば文殊の知恵どころか、四人・・・霧響を含めれば五人もいるのに全く答えが出せないなんてことがあるのか?
しかも俺以外はこんなにも頭が良い人しかいないのに。
「だって要はそーくんと全く同じ人間、もしくは似た性格とか感性とかを持ってる人ってことでしょ?そんなの居ないもん」
「い、居ないってことはないだろ・・・?」
俺はそう言った後初音に小声で耳打ちする。
「もうちょっと真面目に考えてくれ・・・!ここで霧響に答えを示せなかったらまた霧響が俺と婚約とか結婚とかするなんて言い兼ねないんだ、それは初音だって困るだろ?」
「久しぶりのそーくんの声が直接耳元に・・・!じゃなくて・・・そうだけど、そーくんと似た生物を探せなんて無理難題なんだもん、これだけは仕方ないよ、だからいっそのことちょっと心苦しいかもしれないけど今パッと作戦考えてあげたからそれ教えてあげよっか?」
「本当か・・・!?」
やはりなんだかんだでこういうところは頼りになるのが初音だ。
俺には全く作戦なんて思い浮かばなかったが・・・心苦しくても仕方ない、たった一人の妹のためだ。
「ちょっとそーくんに言いたいことあるからそーくんと脱衣所行ってくるね」
「そーちゃんに変なことする気じゃないよね?」
「5分して帰ってこなかったら来てくれていいよ」
「・・・・・・」
初音がそう言うと結愛は大人しく引いた。
・・・なんだかんだで2人は互いのことを理解しつつあるのかもしれないな。
俺はどんな作戦なのかと胸を躍らせながら初音とともに歩いていると、すぐに脱衣所に着いた。
「早速作戦内容についてだけど・・・要は霧響ちゃんがそーくんのことを好きだから、そのそーくん、もしくは最低でもそーくんと似た人じゃないと恋愛できないって話だよね?」
「そうだ」
これは非常に難問だ。
だが初音は余裕の表情で語る。
「じゃあ答えは単純、そーくんが霧響ちゃんに嫌われればいいんだよ」
「え・・・え!?」
「そーくんが霧響ちゃんに嫌われたら、そーくんは霧響ちゃんの理想像から離れることになるから、これで問題解決でしょ?」
確かにその答えだけ見れば問題解決ではあるが・・・
「そ、そもそも嫌われるなんて、どうやって嫌われればいいんだ?」
今霧響の俺に対する感情はその真逆なのに、一体どうやってそこまで反転させればいいんだ。
「決まってるよ、最低な行為を何度も続けるだけ、例えば私だったらそーくんが私に隠れて浮気なんてしてたら絶対に許せないようにね」
まずい例え話なんだろうが実際にしているから心臓が痛い。
・・・だがなるほど、要は霧響が嫌がることをすればいいのか。
「・・・わかった、やってみる」
それが霧響のためになるなら・・・嫌われるとしてもそれを惜しんでる場合ではない。
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