第822話あゆの病み

 まずい・・・どうにかして切り抜けないといけないのに、快楽が邪魔をして頭が回らない。

 あゆは手慣れたように俺のそれを扱っている。


「先輩の子とも長い付き合いですね〜・・・気持ち的には嫌でもこうなっちゃうんだから、先輩って可哀想ですよね、まぁ助かりますけど」


 こんな風に言われるのは癪だが今は本当にどう抵抗していいのか俺の過去の様々な経験を持ってしても分からないのが現実だ。


「・・・あゆ、どうしてそんなに初めてにこだわるんだ?」


「私が先輩の新しい一面を、一番最初に見たいからです、むしろ初めての時の先輩なんてその初めてをした時しか見れないじゃないですか」


「一面って・・・別に俺はそんなにオーバーリアクションなんて取ったりしないから多分期待に添えない」


 頭の中はリアクションだとか、それどころではないだろう。


「リアクションじゃなくて一面、先輩はわかってないですね、私は先輩の思い出にもなりたいですし、いつも冗談気に言ってたりしますけどそれは本気ですから」


「・・・思い出?」


「先輩が私なんか恋愛的な意味で全く眼中にないことなんて私わかってるんですよ、恋愛なんて所詮早い者勝ちなんですから、どっちが早く出会ったか、それだけ・・・それだけで私負けちゃうんですよ」


 あゆは心底悲しそうに言う。

 ・・・そんなに悲しそうにしているにも関わらず俺のそれを扱う手は機械的に動いている。


「だからせめて思い出には残ろうって、そう決めてるんです」


「・・・・・・」


 俺はもしかするといつも元気なあゆに甘えて、あゆとはちゃんと向き合ってこなかったかもしれない。


「あゆ・・・将来のことを考えると、思い出になると思いながらそんな大事な思い出を俺に使うのは良くないんじゃないか?」


「どうせ私の将来は暗いから、そんなのどうだっていいんです」


「・・・え?」


 将来が・・・暗い?

 あゆは頭も良いしルックスもかなり高いし性格だって普段は悪戯好きという感じだが根の部分は真面目だし。

 ・・・将来が暗いなんて言うことは全く無い気がする。


「私は家柄的に多分将来は暗いんですよ・・・ううん、家なんかは最悪反抗できたとしても私夢中になれるものが無いと本当にすぐ病んじゃうんです」


「夢中にって・・・将来何か夢中になれるものがあるかもしれないだろ?」


「先輩以上に夢中になれるものなんてきっとないんです」


 あゆが今までに無いほど暗い顔で暗い事を言っている。

 ・・・年上の先輩として純粋に何かアドバイスを送りたい。


「あゆ、きっと───────」


「あ、そういう先輩風吹かす感じ要らないので」


 どうやら先輩的なことも許してくれない状況らしい。


「・・・そろそろ我慢できないかもしれないので、続きは私に直接してくれれば大丈夫なので、もう我慢しないで良いですよ」


 あゆは制服のボタンを外し明らかに無防備な格好を見せた。

 ・・・正直俺も喋ることに集中しよう集中しようと思い目を背けてきたが頭がおかしくなりそうなほどには今俺の脳内には快楽物質が出ている。

 ・・・が。


「そんなことできるわけないだろ」


「・・・え?」

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