第818話霧響の好機
「白雪さん、少し確認したいことがあるのですが」
「確認?」
私はお兄様と約束があったのか家を訪れていた白雪さんに先のことを問いただすことにしました。
「白雪さんは先日、お兄様がいかがわしいホテルから出てきたことを目撃したと聞いたのですが、本当ですか?」
「うん、本当だよ?」
「なるほど・・・」
そこはお兄様の嘘ではなかったんですね。
ですがだとしたら理解が及ばないことだらけです。
「お兄様が男性とそのような場所に居たことに不自然さを感じはしなかったんですか?」
天銀さんと居たというのであれば、男性2人でそこに居たことにまず違和感を感じるはずです。
「男性・・・?そーくんは女と一緒に居たけど」
「女・・・!?」
白雪さんは天銀さんが女性だともう知っている・・・?
「あれ、てっきりそーくんから色々聞いてると思ってたけど、そうじゃないんだ、そう、そーくんは女とラブホテルから出てきたの」
「女・・・?具体的に誰かはわからないんですか?」
「知らない人だったからね」
・・・おかしいですね。
天銀さんなら間違いなく白雪さんは知っているはず、ですがもし天銀さんだと分かっていたなら逆に今まで男性だと嘘をついていたお兄様に対して怒りの感情を覚えているはずですが。
「では天銀さんとは会わなかったんですか?」
「天銀・・・?どうして今天銀が出てくるの?」
「いえ・・・少々お待ちください、お兄様を呼んできます」
私は白雪さんに玄関で待っていただき、お兄様の部屋に行き改めて問いただすことにしました。
「お兄様、白雪さんが来ています」
「あぁ、ちょうど今から着替えるところだからちょっと部屋から出てもらってもいいか?」
「いえ、そのままお着替えを見せていただいた方が私としては嬉しいのでお構いなく、それよりもお聞きしたいことがあります」
「そっちが嬉しいかどうかは聞いてなくて俺が嫌なんだ!・・・聞きたいこと?」
お兄様は残念なことに私の前では着替えてくださらないようですが、仕方ありません、今は天銀さんの件について聞きます。
「白雪さんはお兄様といた方を天銀さんだと認識していなかったようですが、なぜでしょうか?」
「あぁ、昨日は天銀は普通の女子の服装だったし、帽子も取ってたんだ」
「普通の女性の服に、帽子も取っていた・・・」
「なんちゃらワンピみたいなのを着てた」
「なるほど」
ワンピースを着ていた・・・それに帽子まで取っていたとなると天銀さんだと気づくことはできませんね。
「・・・では、これでお兄様の弱みを獲得いたしましたね」
「・・・え?」
「天銀さんが女性だということと、天銀さんとホテルから出てきたこと、白雪さんは身近な天銀さんで無いから小手先の言い訳に騙されているのかもしませんが、きっと身近な存在である天銀さんだったと知ればお怒りになります、それに今までも天銀さんが男性だったからという理由で許されてきたことも多々あるんじゃ無いですか?」
「・・・・・・」
お兄様の顔が段々と青ざめていくことがわかります。
「ここ最近はお兄様が私のことを女性として認めてくれなかったため、ずっと2人きりですが、改めてよろしくお願いしますね」
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