第817話霧響の問答
「ただいま・・・」
「お帰りなさいませ、お兄様」
霧響はさも当然のように玄関で俺のことを出迎えてくれた。
・・・が、その顔つきはどこか堅い。
「ところで、こんな時間まで一体どこに行っていたのでしょうか」
「え・・・今何時だ?」
「夜の21時です」
そんなに遅かったのか・・・確かに初音とのツーショットを撮りに行くのに初音が本気出すって言って歩き回ったからな。
「改めて質問します、こんな時間までどこに?」
「あぁ、初音とちょっと色々なところに写真を撮りに行ってたんだ」
「嘘ですね」
「は、は!?嘘じゃない!」
どうして本当のことを言ったのに嘘扱いされてるんだ?
「正確には、本当なのでしょうがまだ言っていないことがあるといった感じでしょうか」
「言ってないこと・・・?」
「・・・失礼します」
霧響は俺の服に顔を近づけその匂いを真剣に嗅いでいる。
「・・・異臭がします」
「異臭?」
「どこか、いかがわしいところにでも行ったんじゃありませんか?」
「えっ」
・・・ラブホテルに行ったことが、バレてる!?
ここは隠し通しても良いがもし霧響が何かしら確信していたとしたら俺がやましいことを隠していると取られてもおかしくない。
・・・ここは一度素直に白状するべきだろう。
「あぁ、確かにそう呼ばれるところに行った、ホテルだ」
「お、お兄様がそのような場所に・・・何故、いえその前に誰とですか!?」
「天銀とだ」
「あ、天銀さんと・・・!?」
霧響は驚いている、無理もない。
男同士で行くような場所じゃ無いしな。
「・・・ホテルで、何をしていたんですか?」
「まぁ待て、天銀は男だし、別にそんな変なことをしたわけじゃ───────」
「お兄様は私が天銀さんが女性だということを知っていること、お忘れなのですか?」
「・・・あ」
・・・そうだった。
しまった・・・それならなんとしてでも天銀とラブホテルに行った事実は伏せておくべきだった。
「いや・・・霧響はか、可愛いな〜、自慢だ」
俺は昔は霧響によく効いていた褒め言葉に頭を撫でるという最強の技を使う。
「お兄様、これからもそのように私のことを褒めていただいたり撫でていただいたりするのは是非ともお願いしたいですが、今はそういうことではありません」
「だ、だよな」
「天銀さんとホテルに行っていたって!どういうことですか!お兄様は白雪さんと恋人なんじゃ無いんですか?こんなこと白雪さんに知れたらどうするつもりなんですか!」
「あ、は、初音にはもうバレてるから大丈夫だ」
「・・・はい?」
正確には天銀としてバレてるわけではないが、一応あれはもう一件落着と見て問題ないだろう。
「じゃ、じゃあそういうことだから」
「あ、お兄様!」
俺はこれ以上話を長引かせると自分がボロを出してしまうということを分かったため、すぐに自分の部屋に籠ることを決めすぐに自分の部屋に入った。
「・・・バレている?・・・バレているのであればお兄様のことをこうも簡単に帰すはずがないですよね、お兄様が教えてくださらないのであれば、今度直接確認してみますね、お兄様」
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