第816話天銀は初音に気づかれない

「そーく───────」


「違うんです白雪さん!これには事情があるんです!」


 天銀は初音が何かを言う前に俺のことを擁護しようと俺よりも一歩前に出て俺と初音の間に入った。

 ・・・だが冷静に考えてみると、相手は天銀だ、初音は天銀のことを女子だとはまだ気づいていない。

 もし気付かれた時は俺の命が終わるだろうが、これをどうにか墓まで持っていく、と言うことをできれば俺の命は保たれる。

 ・・・ん?冷静に考えれば?

 ・・・冷静に考えたら今天銀は女子の服装で完全に男子要素なんてないんだった!まずい!!


「これは僕が───────」


「そーくんに集る女の分際で私に話しかけないでくれる?て言うか誰?どこでそーくんと出会ったの?」


 ・・・あ、れ?

 ・・・あぁ、そうか、いつもと見た目が違いすぎて初音は天銀のことを天銀だと認知できていないんだ。

 ・・・これは、まだ希望があるかもしれない。


「あぁ、実はついさっきホテルのチェックインの仕方がわからないって言われて、それで手伝ってただけだ、で、ですよね?天子てんこさん」


「天子・・・あ、は、はい、そうなんです〜、本当に最王子・・・彼には色々と教えてもらっちゃっいまして〜」


 天銀が上手く普通の女子、と言うものを演じている。

 もちろん天子というのは俺が咄嗟に考えた偽名だ。


「へぇ・・・でも、そーくんラブホテルのチェックインなんてしたことないよね?何をどうやって教えたの?」


「ネットで調べながらチェックインの仕方を教えたんだ」


「ネットで調べるならそーくん要らないよね?」


「僕・・・わ、私今日スマホ忘れちゃって〜」


 良いぞ天銀・・・!その調子だ!


「へぇ・・・」


 初音は天銀の体をジロジロと見ている。


「な、なんですか?」


「いや?別に・・・とにかくそーくん、最近そーくんは私のことを不安にさせすぎなの、わかる?」


「あぁ、わかってる」


「わかってないから言ってるんだよ、本当に一度手の指とか切断して恐怖体験として染み込ませてあげないとダメかな?」


「い、いや!だ、大丈夫だ」


「白雪さん、今のはダメですよ、脅迫罪にあたります」


「は〜?知らない女にそんなこと言われる筋合い─────なんで私の名前知ってるの?」


「えっ・・・いえ」


 天銀〜!!女子の姿をすることはできたが探偵としての本能を抑えることはできなかったのか〜!!


「この彼からから聞きました」


「そーくんは私のこと白雪なんて呼ばないよ、あと私の彼氏のそーくんのことをとか言わないでくれる?」


「あ、すみません・・・この方が、チェックインの仕方を教えてくだっていたときに、俺には最高に可愛い白雪初音っていう彼女が居るとおっしゃっていたので、そこから引用させていただきました」


 お、おい・・・流石にそんな言い訳じゃ許され───────


「えっ、あっ、そうなの〜!?それなら仕方ないよね〜!そっかそっか〜、もう〜!そーくん、私のこと好きすぎて自慢したくなるのはわかるけど、知らない人に私の名前教えちゃダメでしょ〜?」


「え、あ、わ、悪かった」


「あ、全然怒ってないんだよ?もう〜!そういう危なっかしいところもかわいいな〜、じゃあそーくん、家まで送ってあげるね〜!あ、なんならこのままラブホテルの中行っちゃう!?これも何かの縁だし!」


「えっ、いや、大丈───────」


「私からも何かお礼がしたいので2のことをどこか、綺麗なところで写真を取りましょうか?」


「え〜?お似合い〜?それほどだけど〜!うん、撮る撮る!行こ〜!」


 初音は稀に見るほどの上機嫌で俺たちの先陣を切った。

 その後天銀は夜景の綺麗なところで俺と初音のツーショットを撮り、もう夜も遅いのでと俺たちはそれぞれ家に帰った。

 これにより、なんとか初音と2人でラブホテルに行くことは回避できた。

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