第815話性的なこと?

「・・・は、は!?な、何言ってるんだ!?」


「そ、そんなにおかしなことを言いましたか・・・?すみません」


「あっ、いや・・・」


 そうだ、天銀はそれが何かわかってないんだ。

 俺も前まではそんな感じだったし、気持ちは分かる。

 そうだ、俺はもう性的な意味でも女性経験はあるんだ、だから天銀にラインを超えないようにそういうことを教えるなんてことは簡単にできるんじゃないか?・・・女性経験があるとは言っても一瞬性行為に成功しただけで終わってしまったが。

 

「・・・わかった、性的なことっていうのはな」


「は、はい・・・!」


 天銀は俺の雰囲気の様変わりに気づいたのか、少し緊張した声音に変わった、一応状況はわかってくれているようだ。

 それならこちらもやりやすい。


「こ、こういうことだ・・・!」


「えっ・・・!」


 天銀は驚いたようだ。

 ・・・無理もない。

 俺は今、天銀の手を握っている。


「な、なるほど、これが、せいてきなこと、ですか・・・ですが、これだとどうしてあのような悲鳴が上がるのか理由がわかりません」


 そうだった・・・声が上がるようなことをしないと天銀は納得できない、つまりそれ相応のことを俺が天銀にしなければいけないということだ。

 ・・・無理だ!さっきは女性経験を得たなんて図に乗ったことを思っていたが俺の本質は全く変わっていない。

 そんなことができるわけがない、しかもこういう時に限って天銀が女装・・・というか元々女子だからこっちが正しいんだろうが、そんな天銀に性的なことなんてできるわけがない。


「・・・わかった、口頭で説明する」


 口頭で説明することはなんとかできなくもない。


「わかりました」


「・・・た、例えば、ハグをしたり」


「ハグ・・・!?」


「あとは・・・キスをしたり」


「キス・・・!?接吻のこと、ですね・・・」


「あぁ、そうだ」


「なるほど・・・理解できました、それでここには男女での出入りが多かったんですね、僕もまだまだ知見が狭かったです」


 天銀は少し悔しそうな表情になった。


「・・・待ってください」


「どうした?」


「ここは男女がそのようなことに使う場・・・ということは、今僕と最王子くんがこうしてここに居ることは・・・?」


「あぁ、もし初音にでも見つかれば何をされるのか分からないレベルのことをしていることだけは確かだ」


 片腕で済めばよし・・・そんなレベルだろう。


「そんな・・・!す、すみません、僕、知らなくて、今すぐここから出ましょう!」


「あ、あぁ!」


 俺もそれには同意なため、すぐにこのラブホテルを後にする。


「あ」


「・・・・・・」


 だが、本当にただただ運がなかったのか、そのラブホテルの前にはちょうど初音が通りがかっていた。

 ・・・終わった、本当にどうして俺はいつもいつもこうなってしまうんだ。

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