第810話バイトの露呈
「一旦はこのくらいで良いかな、そーくんどう?体調は」
「・・・最悪だ」
色々な薬を注入されすぎて頭がぼーっとしている、
それに妙に体が熱い。
「だよね、でもそーくんが悪いんだよ?私に黙って勝手に女と出かけるし、そんな浮気まがいなことするんだからこんなことされるのももちろん覚悟の上だよね?それに隠し事・・・そう、そーくん私に何か隠し事してるよね?」
「・・・何の話だ」
俺は結愛との浮気やバイトをしていることなど隠し事をいくつかしているが、そんなこと口が裂けても言えない。
「・・・隠し事、あるよね?」
「ひっ・・・」
初音は刃物を取り出して俺の方にトントンと当てて見せた。
いつもならそれでもギリギリまで粘っていたかもしれないが、今の俺は頭がぼーっとしているからかすぐに降参してしまった。
「あ、ある」
「だよね、そーくんが素直で嬉しいよ」
初音は妖しく笑っている。
「そーくんは私の体を蹂躙して弄び犯したんだから、責任とってせめて嘘はつかないでね」
「そんなこと・・・」
してないはずなのに、何故か頭の中にはあるはずのない記憶・・・と言うより、今初音が言ったことをイメージして勝手に罪悪感が湧いてきた。
なんだ?どうしてこんなに想像力が・・・もしかして初音に盛られてた薬の中にそういったものが存在するのだろうか。
「じゃあ、そーくんは何を隠してるの?」
「・・・してること」
「してること?何をしてるの?」
「・・・・・・」
頭から全てを吐き出してしまえという謎の指令が延々と降ってきているが、最後に残った俺の理性がそれをなんとか食い止めている。
「酷いよそーくん、そーくんは私の初めてまで奪ったのに、まだ私に何か隠し事なんてするの・・・?」
初音は持っていた刃物を落としその場で泣き崩れた。
な、泣かせてしまった・・・
「あっ、いや、悪い、言う、言うから・・・」
「じゃあ・・・何?」
「・・・実は最近、バイトを始めたんだ」
「・・・・・・は?」
初音はさっきまで泣いていたはずだがいきなり切り替わるように暗い声になった、というかさっきまで流れていたはずの涙が突如止まっている。
・・・も、もしかして演技だったのか!?
「バイト?え?最近出かけてこそこそ何かしてるとは思ってたけど、よりにもよってバイトなんてしてたんだね」
「・・・まぁ」
「まぁじゃないよね?私あれだけバイトなんてしないでって言ったのに、なんでバイトなんてしてるの?」
「俺がどうしようと、俺の自由だ、ろ・・・」
俺は少し怯えつつもいつもなら出ないはずの勇気が出た。
「・・・接客業」
「え?」
「接客業じゃないよね?接客業だったらもうタダごとじゃ済まないんだけど」
・・・カフェのバイト、しっかりと接客業だ。
だがそれを今伝えるのはまずいだろう、上手い嘘の吐き方というのは真実に多少の嘘を混ぜることらしい。
つまりバイトをしていたという真実と、そのバイト内容の嘘を言えば初音にもバレないだろう。
「あぁ、接客業じゃ───────」
「そーくんの今の沈黙でわかっちゃったから何も言わなくていいよ」
「・・・・・・」
どうやら簡単に露見してしまったようだ。
「若気の至りというか・・・」
「・・・しかも言い訳までするんだ、ていうか若気の至りって、自覚がなくてしちゃったことなら何千歩か譲って言えることかもしれないけどそーくんは自覚あってしてるんだから、どうなるか分かってるんだよね?」
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