第808話結愛からは逃れられない
乗り込んだ観覧車のゴンドラは、徐々に上昇する。
「結愛、言いたいことが───────ん?!」
俺は上からの景色などの本題を話しづらくなる前に、結愛に本題を言おうとしたが、結愛はいきなり俺の手を塞ぎ目を俺と合わせてきた。
「そーちゃん今日で私に別れを告げるつもりでしょ」
「んっ・・・!?」
バレてる・・・あんなに楽しそうに遊園地を回ってたのに頭の中ではしっかりとそのことも想定していたのか。
色々と卓越しているな・・・
「別に、私も約束を遵守した上で別れを告げられるなら何も反論する気はないんだけど、約束を反故にされたんじゃ、文句の一つも言いたくなるよね」
約束というのは最低でも年末までは付き合うというこの交際することが決まった最初に話していたことだろう。
「・・・だからね、そーちゃん、あの虫みたいな手口で本当はこんなことしたくないんだけど、そーちゃんが悪いんだからね?」
この前ぶりからは嫌な予感がする。
今すぐにでも弁明して今日俺の考えを告げるのは延期にするのが良いだろう。
「んぁぃんぐんん」
そうだった!手を押さえられてるんだった、弁明しようにも弁明することができない。
「じゃあ、動画撮るよ〜」
は、動画・・・?
結愛は俺の口を片手で押さえつつ、もう片方の手でスマホを取り出し、動画撮影を開始した。
・・・何かよくわからないが、結愛の両手は今塞がっている。
いくら結愛が相手と言えど女子高生の足だけに俺の両手足が負けるわけがない、つまり
俺は両手で結愛の手を口から話、全力で結愛から離れ───────
「・・・あ」
しまった・・・ここは空中、ゴンドラの中だ。
「何のために私がここで行動に移したかっていうとね、2人きりで、絶対に誰にも邪魔されないしそーちゃんも絶対に私から逃げられないからだよ」
「なっ・・・」
俺は外を見て今現在の高さを確認してみる。
・・・まだ半周も回っていない、まだまだこの空間から逃れることはできなさそうだ。
「だからそーちゃん、私もそーちゃんのことを痛めつけたり傷つけたりするのは本意じゃないの、だから言う通りに一緒に動画撮ってくれたら、私は何もしないから」
「動画って・・・どんな?」
「実演してあげる」
結愛は片手を俺の背中に回すと、俺のことを自分の方に倒した。
抱き寄せたではなく、倒した。
「えっ!?」
俺は結愛を下敷きにする形で倒れてしまう。
俺は咄嗟に結愛の顔にはぶつかってしまわないように、両腕を結愛の横に添えることに成功した、最近は色々あって反射神経が上がっているのを実感する。
「な、なんのつもりだ?」
俺の後ろからピコッという動画撮影が終了したらしき音が聞こえてきた。
「これで、そーちゃんが私のことを押し倒してるみたいな映像が完成したね」
「なっ・・・」
「ちょっと顔怪我するの覚悟だったけど、そーちゃんがそれを防いでくれたおかげで、余計にそーちゃんが私のことを襲おうとしてるみたいな映像ができたし、これこそが怪我の功名ってやつだね」
上手いこと言っているつもりだろうが俺は今もしかして脅されて・・・いるんじゃないか?
確かに俺が先に約束を反故しようとしたからだが。
「じゃあ・・・そーちゃん」
このタイミングで、俺たちのゴンドラはちょうど観覧車の一番高い位置、中央に上昇し、俺たちのゴンドラに夕日が差した。
結愛はスマホを片手に俺に笑顔を向けながら言った。
「少なくとも・・・年末までは恋人だよ❤︎」
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