第807話結愛と遊園地
「そーくん、私が居なくなった途端朝から浮気?そのお猿さんぶりを私に使うことができないのはなんでかな?」
初音は学校の中にも関わらずしれっと刃物を出してきた。
「ち、違う、霧響に話し込まれたせいで遅れただけだ」
「へぇ〜」
確実に信じていない時の目だ。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
初音はトイレに行くらしく、教室を後にした。
・・・朝から空気が重かったな。
「そーちゃん、よかったらなんだけど、今日の放課後一緒にお出かけしない?」
結愛から放課後出かけようとの提案が来た・・・が。
初音にバレた場合俺の首が飛ぶだろう。
それでも、俺はその誘いに応じた。
「わかった、どこに行くんだ?」
「ん〜、遊園地とかどうかな〜?」
「わかった」
俺は初音にバレた場合首が飛ぶとわかっていたが、それでもあえて結愛と一緒に出かけることにした。
・・・今日、答えを出そう。
・・・それにしても。
「遊園地・・・久々だな」
「そうなんだぁ、いっぱい楽しもうね!」
「・・・あぁ」
純粋に一緒に楽しもうとしてくれている結愛には申し訳ないが、今日の遊園地の出かけの最後で・・・しっかりと答えを告げよう。
そうすることが両者にとって一番幸せだ、このままずるずるいくことこそが一番よくないことだ。
「そーくん、家に帰ったらすぐに連絡するからね!」
「あ、あぁ、わかった」
今までなら初音たちと一緒に学校から家に帰っていたが、今は別居中、もう一緒に帰るというのは家までの道順的に難しいだろう。
初音はすぐさま教室から出て行った。
・・・怪しまれないように初音からの連絡はできるだけ早く返した方が良さそうだな。
「そーちゃん!お待たせ!」
「あぁ」
俺と結愛は制服のまま遊園地の入場ゲートを潜り抜けた。
歩くだけで周りから好奇の視線を感じるが、十中八九結愛に対する視線だろう。
だがこんなことは慣れっこ、初音にしろ霧響にしろ一緒に出かけるならこのような視線とはどうしても向き合わなければならなくなる。
「みんなそーちゃんのこと見過ぎじゃない?気持ちはわかるけど」
そんなことを初音も言っていたような気がするがそれだけは絶対に違う。
「あ、見てそーちゃん!コーヒーカップがあるよ!」
遊園地のコーヒーカップといえば、複数人で乗ることが基本とされているグルグルと回るやつだ。
「乗ろ!」
「あぁ」
5分もかからずに俺たちの順番が来て、俺たちはコーヒーカップに乗る。
「共同作業だね、そーちゃん!」
「きょ、共同作業って───────うわっ!?」
結愛はコーヒーカップを回し始めた。
俺もコーヒーカップをゆっくりと回す。
「・・・結愛、ちょっと言いたいことがある」
「ん、どうしたの?」
周りに誰も声が聞こえないこの状況こそが言い出しどきだろう。
「俺の考えた結論を聞い─────あ」
その直後、コーヒーカップが急速に回り始め、それどころではなくなった。
俺たちはその後もいくつかのアトラクションを楽しんだのち、最後は観覧車に乗ることとなった。
・・・観覧車、ここしかないな。
俺は密かに決意を固めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます