第806話血縁関係
「お兄様〜♪どうして私をお残しに〜♪」
霧響は怒りを混ぜたオリジナルソングを歌いながら朝のご飯を作ってくれている。
朝ごはんを作ってくれるのはとてもありがたいが包丁で料理している音が恐怖にしか聞こえないことだけをどうにかしてほしい。
「・・・静かだな」
いつも朝といえば騒々しいものだったが、俺と霧響しかいないとなるとやはり静かになるものだ。
「お兄様、できました・・・は良いとして!どうして私をここにお残しになったんですか!もしお兄様が私のことをお残しにならなければ私は妹ではなく女性として扱われることが公式に認められていたんですよ!」
「だからだ!」
「むぅ・・・ですがこれは逆に好機とも捉えることができるんです」
霧響は妖しく笑みを浮かべた。
「好機・・・?」
「赤子同然のお兄様が今は私の前で1人なんですから」
「あ、赤子!?」
確かに少し子供扱いされていると見受けられる点はあったが赤子・・・そこまで子供扱いされていたのか、心外にも程がある。
「お兄様、私のことをどう思っていますか?」
「・・・妹だ」
「妹、ということは性別が女性であることはわかっていただけている、という解釈で構いませんよね?」
「あぁ」
そこまで否定することはできない。
「でしたら、お兄様は私のことを女性だと思っている、ということですよね?」
「悪意のある切り抜き方がすぎるな・・・」
「ですが、そういうことです」
「血が繋がってるんだ、女性と言っても他の女性とは意味が違う」
・・・今までは霧響を実直に説得しようとしていたが、少し形を変えてみたほうがいいのかもしれない。
「例えばだが、霧響、父さんの性別はわかるか?」
「男性です・・・いきなりなんですか?お兄様」
霧響は少し機嫌が下がったようだ。
霧響はあまり父さんのことを好いていない、その理由は明らかに自分よりも情けないという場面を何度も目撃しているからだ。
俺も似たようなものだが・・・何故か霧響には嫌われるどころか異常な愛を向けられている。
「あぁ、その通りだ、この場合、霧響は父さんのことを男性として見てるってことなのか?」
「やめてくださいお兄様、それは違います、お父様はあくまでも親です」
その言葉を待っていた。
「そう、その通りだ、血の繋がった親だ、だから霧響、俺からしても霧響は妹なんだ、だから異性として見る事はできない」
今までで一番筋の通った説得をできている自信がある。
やはり2人だけの空間になると兄としての威厳が無意識の内に出てしまうのかもしれないな。
「はい?意味のわからないことを言わないでくださいお兄様、お父様とお兄様とでは年齢も違いすぎますし、私からすれば生物としての格が違います、お兄様をお父様と並べないでください」
父さんのことを好ましくなく思っていないことはわかっていたがここまでとは・・・家では母さんに気を遣ってそこまで態度に出していなかったのか。
「お兄様には今一度徹底的に話し込まなければならないようです」
「え」
その後、自分が今休校中なのを良いことに、俺の学校の登校時間なんてものは全く気にせずに俺は延々と似たような内容を話し込まれた。
なお、俺は絶対に2限目にすら間に合わない時間帯にまで家の中に居させられてしまった。
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