第805話公平?
「っていうことだから、今日からは全員この家から出て行って、自分の家で、ここに来る前と同じ生活をして」
初音は別居の旨を全員に伝えた。
みんなの顔は神妙な顔つきだ。
「僕は元々高校生の男女複数人で一つ屋根の下で生活するというのは不自然だと思っていたので、特に問題ありません」
「私も、別に良いよ、こんなのと一緒に生活なんてもう懲り懲りだしね」
何故か特に意味はないはずなのに一緒に生活している小姫さんがそんなことを言う。
・・・小姫さんに関しては未だバレずに続けられているバイトで会うこともあるだろうし、そんなに離れることにはならないかもしれない。
「待って、この家って虫名義の家なんでしょ?じゃあ虫はそーくんと一緒にこの家に残るってこと?」
「ううん、もちろん私もそーくんから離れるから、この家は実質そーくんの家ってことになるね」
「・・・え?お、俺は実家に戻るなり他の家を借りるなりするんじゃないのか?」
「この家は元々そーくんのための家なんだから、そーくんは何も気にする必要ないの」
・・・こんな豪華な家に1人、逆に物悲しさを感じてしまわないか心配だが、反論材料なんて存在しない、受け入れるしかない。
「私は妹としてお兄様の生活を見守る権利があります、それはいくら白雪さんでも妨害できるものではありません」
霧響はやはり反対するようで、兄妹という強い権利を身に纏いながら話を始めた。
「確かにそうだけど、いつもは妹扱いするなって言うくせに、こういう時だけは妹なんだね」
「便宜上便利なものは利用させていただくだけです」
「じゃあそーくんも霧響ちゃんのこと妹としてしか見れないかもしれないね」
「そんなことはありません、お兄様のことを籠絡する方法なら私はもう思いついているのです」
2人はバチバチに閃光を散らしあっている。
「そーくんからも言ってあげてよ、もしそんな権利使うんだったらこれからは何が起きても霧響ちゃんのことを妹扱いするって」
「え・・・」
ここに来て初音が俺に援軍を求めてきた。
「お兄様はそんなこと言いません!」
「そーくん、言うよね?」
「え、まぁ、そう、だな、公平にというか・・・」
「公平?お兄様は私のことを普段は兄妹だからと公平に私のことを扱ってくださらないのに、こういう時だけ、そのようにおっしゃるんですか?」
さっき初音が霧響に対して言ったことが今度は霧響から俺に投げかけられた、飛んだ応酬戦だ。
「そういうことでしたら、普段は私のことを女性として扱ってくださる、ということでよろしいですよね?」
「待て・・・俺が悪かった」
「いえ悪くありません、私は確かに女性で、皆様と平等に扱われる立場にあるので、お兄様から一時離れさせていただきます」
霧響は俺と初音の言ったことを逆手に取ってこれからは俺に女性として扱ってもらうことを正式に認めさせに来ている。
「・・・・・・」
流石の初音もこの状況には悩ましそうにしている。
俺と霧響が2人で生活するとなった場合もし何かあれば俺は今初音にスマホを預けている、初音に何かを相談することもできない。
とはいえ俺は霧響に兄として負けるわけにはいかないが。
「・・・じゃあ、やっぱり霧響ちゃんだけはそーくんと居てもらおっか」
「うん、私もそれが良いと思う」
「えっ・・・なんでですか!嫌です!私嫌ですよ!お兄様から一時的に離れることで女性として扱われるなら絶対そちらの方が良いです!」
霧響は反対を示しているが・・・初音と結愛の強引な押し進めにより、霧響だけは俺とこのまま同棲することになった。
初音も後日合流するとは言っていたが、それでもその数日間の間は正真正銘霧響と2人きりだろう。
初音との関係も進んだし、結愛との関係性もこのままあやふやにはできないためできるだけ早く結愛との話を付けたいが・・・その前に大きな壁がありそうだ。
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