第801話初音の微笑み

「は、初音!?どうするんだ!?」


「そーくんは黙ってて」


 しまった・・・別に隠れる必要なかったのにそーくんの裸が誰かに見られると思ったら反射的にそれが嫌で布団に身を隠しちゃった。

 あぁ最悪、せっかくそーくんと初めてをできたのに、結局1回入れるだけ入れて終わっちゃったぁ、これじゃそーくんの初めてもらったって言って良いのかわかんない・・・けど私たちが一歩進んだことは事実。


「せんぱぁい、なに寝たふりしてるんですか〜、起きてることわかってるのでそんなことしたって無駄ですよ〜」


 いっそのことここで姿出してそーくんが誰のものなのかこの女に分からせることができるかも。

 ・・・でもそーくんの裸。

 ・・・あぁ〜!いくら私でもそーくんに裸で密着されてて正常に頭が回るわけないのに!本当にどうしよう。

 ・・・そうだ。


「ぐっ?」


 私はそーくんのことを軽くつねって声を上げさせてみる。


「あ、やっぱり起きてるんじゃないですかぁ、なんで寝てるフリなんてしたんですかぁ───・・・ん?」


 こっちに近づいてくる足音が止まった。

 そーくんが起きてることを確認できたから止まったのかな、何かに疑問を持ってるみたいな声あげてたけど、それはなんだろ。


「・・・ま、先輩がお寝坊なのは仕方ないですし、また出直してあげますよ〜」


 そう言うと足音が遠ざかっていき、やがてドアが閉まる音が聞こえてきた。

 布団越しで目では確認できないけど、足音の方向からしてただドアを閉めただけじゃなく、ちゃんとあの女もこの部屋から出てるであろうことは間違いない。


「・・・危なかったな」


「・・・そうだね、危うくそーくんの裸が見られちゃうところだった」


「いやそこじゃないだろ!」


「え、それ以外に何か問題があったの?」


「え、いや・・・」


 そーくんはいつも通り意味わからないことを言う。

 そーくんがおかしなことを言っちゃうのはいつものことだから別に良いけど。


「本当はこれから続き、って言いたいところだけど、出直すとか言ってたしリスク高いから、一旦また後日にしよっか」


「あ、あぁ、わかった」


 そーくんは布団から出ようとする、そのそーくんのことを引き止めて私はそーくんに言う。


「そーくん、そーくんはさっき私の大事な初めてを奪ったんだよ、そのこと忘れないでね」


「・・・わかってる」


 これでたまに他の女に目移りしちゃうそーくんでも、根は優しいから今の私の言葉がフラッシュバックして他の女に何かたぶらかされそうになっても思いとどまってくれるよね。

 本当は奪われたなんて思ってないし、むしろ奪ってくれたって思ってるけど、そーくんにはこの言い方の方が効きそうだもんね。

 ・・・これでようやく、体でもそーくんが私のものであることが証明できた。

 次はもっとちゃんと愛し合いたいなぁ。

 私は布団の中で小さく微笑んでいた。

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