第797話ナンパと逆ナン
「し、死にかけた・・・」
「すごかったね〜」
俺が死にかけた原因は半分ぐらいは結愛のとある箇所にあるんだが、それは言わないでおこう。
「はぁ〜、やっぱそーちゃんとのお出かけ楽しい〜!このまま世逃げしちゃいたいな〜、なんて冗談だけどね」
「あぁ、俺もだ」
ちょっと気まずさもあるかと思っていたが、普通に遊ぶ分にはやはり楽しい。
たまにはこういうのも良いな。
「え・・・!?そーちゃんも!?」
「あぁ・・・あ?ちょ、ちょっと待て!多分何か勘違いしてるだろ!俺は世逃げをしたいって言ってるんじゃなくて、楽しいって話だ」
「あっ、そういうことなんだね、ちょっと残念」
結愛はおもむろに残念そうにした。
「ねぇ、ところでそーちゃん、気づいてる?周りの人たちがこっち見てきてるの」
「え・・・?」
確かに言われてみれば周りの人たちが少なからずこっちを見ているような気がする。
「多分そーちゃんがかっこいいからこっち見てきてるんだね・・・でも安心して!私が居る限りそーちゃんに手なんて出させないから!」
「は、は!?いや!どう考えても俺じゃなくて結愛のことを見てるに決まってるだろ!?」
「そんなわけないって!私なんかよりもそーちゃんの方が魅力あるもん!」
「いやいやいや・・・」
どうしてこうも自己評価が低いんだ。
「君たち、ちょっといいかな」
ピアスを一つ開けている若干チャラそうな男の人と際どい水着を着た女の人が俺たちに話しかけてきた。
「え、な、なんですか?」
「ほら言った通りじゃん!絶対なよなよしてるから押せばいけるって!」
「そうみたいだな〜」
目の前で悪口を言われているような気がする。
「君たちちょっと今時間ない?4人いるアトラクションがあるんだけど見ての通り人数不足でさあ、そんな時間取らせないから一緒に来てくれない?」
・・・本当に人数不足なだけなら行ってあげたいところだが直感的にはそれが目的じゃないと思ってしまっている。
つまり嫌な予感がする。
「いや・・・ちょっと俺たち急いでるので───────ぇ!?」
「まぁまぁ、ちょっとだけだから・・・ね?」
際どい水着を着た女の人が俺に体を密着させながら俺に回答を改まるように迫ってきた。
ま、まずい、知らない女性にいきなりこんなことされたら───────
「そーちゃん、ちょっと私だけでこの人たちの話聞いてきていいかな?」
「え?ちょっと待て」
俺は結愛の耳元で喋る。
「どう考えたって危ないだろ、何考えてるんだ」
「ぁっ・・・!だ、大丈夫だよそーちゃん、私が話つけてくるから!それより、そーちゃんの息と声が耳にかかる方が私にはっ!命の危険っていうか、感情が昂るっていうか嬉しいっていうか・・・!なの!」
「は、は?」
「とにかく!大丈夫だから」
結愛は一度俺から距離をとると、2人に話しかけた。
「彼は体調が良くないみたいなので私があっちん方で1人で話を聞きます・・・きゃっ!そーちゃんのこと彼だって!」
何か勝手に盛り上がっているがそれは無視しよう。
「あ、まじ?おっけー」
4人いるはずなのになんで1人でおっけーなのかというところがもうすでに矛盾しているが・・・結愛もスルーしてるし、俺もスルーしておこう。
「え、ちょっと、私その女の子には興味ないんだけどぉ」
「順番だって、まずは俺の方に付き合ってよ」
「はーい」
すると3人は人目につかない店の影となっている所に消えて行った。
・・・と思ったが、15秒ほどですぐに戻ってきた、結愛だけが。
「え、結愛だけ?」
「うん、やっぱり大丈夫だって」
「え・・・そんな感じじゃなかっただろ?」
「急用があるって言ってたよ」
俺は一応あの人たちがいるかどうかを確認すべく店の影となっているところに行こうとするが・・・
「そーちゃん、行かないことをおすすめするよ」
と言われたため俺は大人しくその忠告に従ったが、なんとなく何をしたのかは察しがついた。
「じゃあ俺ちょっと飲み物買ってくるけど何かいるか?」
「え、本当!?じゃあそーちゃんと同じの!」
「そうか?わかった」
俺は何を飲むか考えながら自販機に足を進めた。
「・・・そーちゃんを口説こうなんて、死刑でもおかしくないのに気絶だけで許してあげた私の優しさに感謝してほしいな」
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