第796話褒められる

 まず来たのはスパと言えばの円を描くように回るプールと想像よりも大きなウォータースライダーだ。


「人思ったより少ないね〜」


 スパに来るのは大体小学生、中学生、高校生が多いだろうが、その学生のうちのおそらく半分以上はもう夏休みを終了しているんだろう。


「まずはプールで水慣らしからかな?」


「そうだな」


 暑いし、俺はいち早くプールの水に浸かった。


「ぁ、冷たっ!」


「そ、そーちゃん!?」


 ゆっくりと浸かったつもりだったが暑くて気が早ってしまったのか、一気に体を浸からせてしまった。

 結愛はそんな俺の情けないところを見たが、すぐに自分も一気に浸かった。


「結愛、冷たくないのか?」


「私、そーちゃんのお嫁さんになるために色々と頑張ってきてたから、大丈夫!」


 どんなことを頑張れば冷たさに耐性なんてつくんだ。


「それよりそーちゃんは大丈夫?」


「あぁ、まだちょっと体の芯が冷えてる感じがするがちょっとずつ収まっていってる」


 段々とぬるく感じて来ている、人間の体というのはすごいものだ。


「それじゃ心配だよ・・・そうだ!」


 結愛は何かを思いついたと思ったら、俺の背中に手を回し俺のことを自分の方に抱き寄せ、そのまま抱きついてきた。


「え・・・!?」


「これで寒くないよね!」


 寒くないどころか正面から抱きつかれてるから色々と当たってむしろ心情的に熱くなってきた。


「ゆ、結愛!そ、の・・・」


「どうしたの?暖かくない?」


「いや・・・もう十分暖まった、大丈夫だ」


「そっか・・・!」


 結愛は俺からそっと離れた。

 ・・・あぁ、本当に色々な意味で暖まってしまった。


「そーちゃん小学生の時は泳げなかったと思うけど、今ってもう泳げたりするのかな?」


「え・・・まぁ、前よりは」


「そうなのっ!?そーちゃんの泳ぎ姿みたいなー!」


「・・・あぁ」


 勢いでそんなことを言ってしまったが実際は泳げない・・・正確に言うとあの頃より身長と肺活量は増しているため、その差分で前よりは泳げると予測立てているわけだ。


「ここあんまり人居ないし軽く泳いでみて!」


 俺は言われるがままに泳いでみる。

 ・・・俺が思っていたよりも泳げて、正直驚いている。

 俺はそろそろ肺活量が持たなくなってきたため、俺は一度足をつける。


「見てたか!小学生の頃よりは泳げるようになってるだろ!」


「うんっ!すごいよそーちゃん!」


 褒められた・・・最近運動で褒められることは滅多にないどころか俺が運動を苦手なことを良いことに色々とされてきたため純粋に嬉しいな。


「そーちゃん、今泳いだので疲れてない?1時間くらい日陰で休む?」


「いくらなんでも甘すぎないか?全然まだまだ動ける」


「そうかな?じゃあウォータースライダーで滑ろっか!」


 俺と結愛は一緒にウォータースライダーに乗───────


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺はグルグルとウォータースライダーを回りながら、何か肉厚のあるものに呼吸を塞がれ、あと少しで本当に命が亡くなってしまっていたという命懸けのウォータースライダーからなんとか生還した。

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