第795話結愛とデート

 今日はとうとう結愛と出かける日だ。

 昨日もバイトがあったが、特に難なくこなすことができた。

 ・・・そろそろ初音に何か勘づかれていてもおかしくはないが、特に何も言われてはいない。

 むしろ勘づかれていて何も言ってきていない、というケースだとバイトを認めてくれたということになるため非常に助かるが・・・

 この調子で行くとあと少しで初音に打ち明け・・・


「俺実はバイトしてるんだ」


「え、ダメだよそーくん!危ないって言ったでしょ?」


「俺はもうこんなに長い間バイトしてるんだ、危ないも何もないだろ?」


 これは完全に俺の想像ではあるが、こんな感じの会話が将来繰り広げられることが予想され、そうなると初音にも反論の余地は一切残されていないだろう。


「今はそうじゃないか」


 それよりも今は目の前の結愛に集中しよう。

 結愛がどんな手なのかはわからないが、初音の目を盗むことのできる手を打っているらしいため、この事がバレる心配はなさそうだ。


「今日はどこに行くんだ?」


 一緒に玄関から出て歩いている最中、俺はそう質問を投げかけてみる。


「えっちなホテル〜」


「は、は!?」


 何を言ってるんだ・・・?

 イメージしていたものと全く違う。


「冗談だよ〜?そーちゃんはかわいいなぁ〜」


「心臓に悪い冗談はやめろ!」


 こんなことここ最近も誰かに思った気がする。

 過剰な心臓に対するマッサージで負荷がかかりすぎて本当にいつ旅立ってしまってもおかしくない状況にいるな、俺は。


「で、実際はどこに?」


 この辺となると行けるところもかなり限られてくるだろう。


「それはお楽しみだよ〜、あ、その前にそーちゃんにこれ、渡しとくね」


 結愛は俺にどこかのお店の袋を渡した。


「中もその場所についてからのお楽しみだよ〜」


 俺は全てをお楽しみという一言で捲られてしまい、大人しく結愛についていくことにした。

 何駅か挟み、ようやくその場所についたらしい。


「ここは?」


「中に入れば分かるよ」


 俺は結愛よりも一足先に中に入ってみる。

 中に入るとその独特な匂いからすぐにここがどこなのかわかった。


「プールか・・・?」


「うん、どちらかって言うとスパかな?夏だし、やっぱり水場は良くないかなって思って」


 確かに言われてみれば夏場なのに俺たちは全くプールに行ってなかったな。

 夏ももう本当に終わりを迎えそうな空気だ、思い出としてプールに行くのは全然良いだろう、むしろ楽しみだ。


「楽しみだな」


「本当っ!?良かったぁ〜」


「・・・あ、じゃあこれって」


「うん、そーちゃんの水着だね」


 どうやら俺が渡された袋の中に入ってるのは俺用の水着らしい。


「あそこが着替えるところみたいだね、行こ!」


 俺と結愛は真隣で着替えた。

 俺は否定したが結愛が万が一変な人が居たらと自分の心配ではなく俺の心配をして聞かなかった。

 本当に過保護なんていうレベルではないほど過保護だ。

 因みにお互い背中合わせだったため、裸などは見ていない。


「着替え終わったよ!」


 俺は振り返ると、結愛はもうすでに水着姿になっていた。

 明らかにいつもより露出が多い桃色の水着、特に胸部が本当にすごいことになっており、一括りにまとめられた髪はいつも通りだが水着を着ているというだけでいつもとは違うという風に感じる。


「ど、どうかな?」


「あぁ、かわ・・・良いと思う」


「今かわいいって言おうとしてくれた!?ありがと〜!嬉しいよ!」


 恥ずかしすぎる・・・しまった。

 初音が聞いていたら死刑確定だっただろうな。


「じゃあ遊びに行こっか!」


「あぁ」


 俺は久々に心を躍らせながら、結愛と一緒にスパを楽しむことにした。

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