第781話初音にプレゼント

 帰り道で小姫さんとは一度別れ俺が先に帰ってきた。


「ただいま」


 俺は何事もなかったかのように出迎えてくれた初音に対してただいまを言う。


「おかえりそーくん、遅かったね」


「あ、あぁ、初音にプレゼントするものの内容を考えててな」


 もちろんバイト終わりにしっかりと初音にプレゼントするものも買ってきている。

 元々プレゼントする気はなく咄嗟に発した言葉だったため変なものを渡してしまわないか不安だったが、小姫さんも一緒にいたため音沙汰ないものを選んでもらえた。

 今日は本当に小姫さんに助けられてばかりだ、今度何か形としてお礼をしたいな。


「そうなんだ〜、本当にそれだけ?」


「あぁ」


「・・・そう、ならいいんだけどね」


 疑い深い初音は当然何かを疑って掛かっているようだが明確な証拠がないから何も言えないんだろう。

 いずれ俺がもう少し頼れる人間になってから打ち明けることにしよう。

 悪いことをしているとは思っていないが隠れてバイトというのもなんだか少し気が引けるしな。


「で、そのプレゼントっていうのは?」


 普段ならもう少し喜んでくれそうなものだが、初音の中で何か腑に落ちていないのか少し不機嫌そうだ。


「あぁ、これだ」


 俺は袋ごとプレゼントを初音に渡す。

 俺が初音に買ってきたのは小姫さんと一緒に選んだポーチだ。

 女子にはこれを渡しておけば間違い無いらしい。


「これ・・・ポーチ?」


「あぁ」


「嬉しいけど・・・これだけのために今日1日そーくんと会えなかったって考えると、ちょっと寂しいよ」


 初音は純粋に寂しがる恋人のようなことを言う。

 というか純粋に寂しがっている恋人だ。


「わ、悪い」


 流石に長時間出かけすぎて色々と不信感が募っているのか・・・どうしたものか。

 だが小姫さんに「あの子のご機嫌取りならこれ渡しとけば間違い無いから」と言われたし、それを信じることにしよう。


「・・・えっ!?」


「・・・ん?」


 初音は袋に入れたままのポーチを見て何か驚いているようだ。

 袋に入れたままなので俺には何に驚いているのかわからない。


「どうしたんだ?」


「そーくんっ!そう言うことなら早く言ってよ!」


「え、ど、どういうことだ?」


 さっきまでとは一変し、よほどポーチを気に入ったのかいきなり上機嫌になった。


「でもこんなのなくたっても大丈夫だよ!」


「な、何を言ってるんだ?」


「もう〜!照れ屋さんなんだから〜!ほら、早く行くよ!」


「えっ・・・?」


 本当に情緒が不安定すぎて意味がわからない。

 こんなのなくても良い・・・?

 ポーチが気に入ってテンションが上がっていたんじゃ無いのか?

 俺は流されるがままに俺の部屋に連れ込まれた。


「じゃっ、シよっか❤︎」

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