第780話小姫さんの謎
その後俺はできるだけなよなよ、おどおどせずに接客業に応対することを意識し、初バイトを成し遂げた。
「お疲れ〜、じゃあまたシフト送ってね〜」
「は、はい!」
俺は小姫さんに勧められ週2回好きなところでシフトを入れられる形式に応募させてもらったため、これで何日か休むことができる。
今は夜の18時、小姫さんとの帰り道。
「どうだった?初めてのバイト」
珍しく小姫さんの方から話題を振ってくれた。
「思ってたより楽しかったです」
「そう、それはよかったね」
・・・バイトをしている時も少し思ったりしたが暴言さえ言わなければ小姫さんは普通に良い人なような気がしてきた。
大事なことなのでもう一度言うと、暴言さえ言わなければ、だ。
「何私のことジロジロ見てんの?キモ、死ねば?セクハラで訴えたら君のこと社会的に殺すことだってできるってこと忘れないで欲しいんだけど?」
この調子だとそんな日は永遠に来ないだろうな。
「まぁ、楽しかったなら良かったけど」
「小姫さんのおかげです、ありがとうございます」
俺は誠心誠意お礼を言う。
小姫さんがいなければバイトを探し始める段階でバレてしまい、もしかするともう2度とバイト探しなんてしないと俺の振り絞った勇気がなくなっていたかもしれない。
そんな意を込め、日頃暴言を吐かれていることを今だけは全て忘れお礼を口にした。
「・・・敬語とかうざいんだけど」
というつもりだったんだが、どうやらこの誠心誠意は小姫さんには通じなかったらしい。
「え、でも一応年上の先輩ですし、何よりお礼を──────」
「私のこと年上のお姉さんなんて思ってなかった癖にこういう時だけ都合いいんだね」
まだ根に持ってたのか・・・痛い話だ。
「じゃ、じゃあタメ口で言えばよかったんですか?」
俺は少し好戦的に出てみる。
そろそろ小姫さんにも反抗しておかないと本当に延々に暴言を吐かれてしまいそうだしな。
「そうだよ」
なんでそうだよなんだ。
「あ、そう言えば君えっちなこと興味ないんだっけ」
「い、いきなりなんの話ですか」
意味がわからない・・・ん、ちょっと待て。
小姫さんまでもがそんなこと言い出したらいよいよ俺の避暑地が無くなってしまう。
「いや、その年齢の男子のくせに興味ないなんて去勢でもされてるのかなって」
「ちょっ・・・やめてくださいよ!」
「なんなら私が確認してあげよっか?」
何を思ったのか本当に俺のズボンに手をかけようとしてきたので、何を考えているのかは知らないがこれ以上させないためはっきりという。
「だからやめろって!」
俺は小姫さんの手首を掴んでその意味のわからない行動を終わらせる。
「・・・タメ口やめてくれたね」
「・・・は、は?」
「これからは私に敬語なんて使わないでね」
そう言うと小姫さんは何事もなかったかのように歩き始めた。
・・・こんな事をされるぐらいなら敬語はやめておくが、一体タメ口になんの魅力があるんだろうか。
「・・・はぁはぁ」
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