第776話小姫さんの照れ
30分ほどかけてようやくバイト場所であるカフェ前に着いた。
おそらく慣れていれば30分もかからないんだろうが、初めての通勤ということもあり道順も全くわからなかったため、逆に30分でこれて上出来と言ったところだ。
このカフェ周りの雰囲気の感想としては、本当に陽な感じの人が来そうな雰囲気、オシャレな場所だ、少し場違いな気もしている。
「小姫さん・・・」
小姫さんはこの場所に来れたんだろうか。
このカフェ自体はかなり目立つところにあるから、階が分かっていてこの建物の中に入れさえすれば迷子になるなんてことはないだろうが、ここに来るまでで迷子になっている可能性も───────
「一人で私の名前呟かないでくれる?本気で気持ち悪いよ、死ねば?」
「ん・・・小姫さん!」
後ろを振り返ると、そこには小姫さんがいた。
「ちょっ、だからそんな私の名前呼ばないでって、分からないの?死にたいの?なら最初からそう言ってくれれば──────」
「ま、待ってください、死にたくないです、すみません」
とりあえず小姫さんに落ち着いてもらおう。
「・・・そう」
一旦落ち着いてくれたようだ。
小姫さんも落ち着いてくれたところで、俺はシンプルな疑問をぶつけてみることにした。
「なんで小姫さんが俺の後ろにいるんですか?」
「なんでって、私が君の後ろに居たら悪い?」
「そ、そうじゃなくて、小姫さんの方が先に家を出たのになんで俺の後からなのかな・・・って思って」
「えっ、そ、それはっ・・・!」
小姫さんは何故かバツが悪そうに少し頬を赤くして顔を背けている。
「なんで照れてるん・・・ですか?」
「はっ、は!?照れてないし!死ねば?うざ、キモイ、勘違いしないでくれる?」
小姫さんはお得意の暴言を連発してきた。
・・・この暴言連発も何日も一緒に生活していれば慣れてくるというものだ。
「それより、時間も見れないの?そろそろ指定の時間になるよ?」
「え?」
俺がスマホを見ると、20分は早く着こうと思っていたのに、気がつくとあと5分にまで迫っていた。
「早く行こう!」
「・・・うん」
俺と小姫さんはカフェの中に勢い良く入った。
勢い良く入ってしまったため、カフェの中のお客さんから少し視線を感じる。
「バカ」
「・・・・・・」
これは言われてしまっても仕方ない。
「お客様、2名様でよろしいでしょうか?」
店員さんが気にせず対応してくれたため、俺は今日からバイトが決まっているということを説明した。
「あっ、わかりました、ではこちらに」
俺と小姫さんは店員さんの誘導に従って従業者しか入れないところに入れてもらうことになった。
・・・この感じ、バイトの醍醐味だ!!
カフェ裏とかコンビニの裏とか、人生で一度は入ってみたかった。
とうとうその小さな夢が叶う瞬間が訪れる。
・・・控え目に言っても楽しみすぎる。
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