第775話初音の心配
応募したバイトが上手く決定し、とうとう初バイトの日になった。
小姫さんとは別々の時間に外に出る。
初音たちからすれば小姫さんたちがどこに行こうと知ったことではないのか特に反応を示さなかったが、俺が出ていくと言えば何かしら聞かれるだろう。
かといって黙って出ていくと前回の二の舞になる。
ならばどうするべきか。
「初音、ちょっと出かけてくる」
「どこに?」
「ちょっと欲しいゲームがあるから、家電量販店にだ」
嘘と真実を混ぜるというものだ。
今までは嘘をつくか本当のことをいうかどちらか極端だったが、こうすれば引き止められることもないだろう。
「そうなんだ、じゃあ私も着いて行くよ」
流石初音だ・・・咄嗟にその一手を打ってくるとは。
だがその返答は俺が2時間考えた返答のうちの1つだ。
「いや!実はちょっとサプライズもあるんだ」
「サプライズ・・・?」
「あぁ、だから着いてこられるとそのサプライズができなくなる」
「そっか・・・わかったよ、楽しみにして家で待ってる」
・・・過去の俺!あんなに考えた甲斐があったぞ!!
これでひとまず今日はバイトに行くことができる。
「じゃあ・・・不安だから盗聴器だけ付けてもいいかな?」
不安だからといってそんな軽く盗聴器なんてものを付ける高校生の恋人がこの世に存在していいのか疑問だ。
「ほ、本当に変なところには行かないから大丈夫だ」
「そうなんだけど、もしそーくんが言い寄られたりしちゃった時のためだよ!」
「普通の人は俺に言いよる理由なんて何もないだろ!」
「私にはあるよ!」
「宣言するな!」
はぁ・・・初バイトで少しだけ緊張しているのにこんなところで体力を使う羽目になるとは、なんならバイトよりこっちの方が難しい気がしてきた。
「と、とにかく、大丈夫だから」
「・・・わかったよ」
ようやくわかってくれたらしい。
「じゃあ妥協でGPSだけは付けてもいいよね?」
初音はそっと小さいなプラスチックを取り出した。
「いやいや、ダメに決まってるだろ!なんで盗聴器の妥協がGPSになるんだ!」
「ダメ!これだけは許してっ!じゃないともしそーくんが連れ去られちゃたりした時どうすればいいの!!最悪この国平らにしないと行けなくなっちゃうよ?」
「っ・・・わかった」
本当にはできないと思うが似たようなことを初音ならできるかもしれないと思わせる力が初音にはあるため、俺はそこを譲った。
・・・GPSか。
俺のバイト先はビル型のデパートのようなものの一角、もちろんその中には家電量販店もあるだろう。
GPSで見るだけなら俺がどの店に入っているかまではわからないはず。
むしろ俺が嘘をついていないことの証明にもなる。
何時間もそこに居たことは違和感を覚えられるだろうが、初音へのプレゼントを考えていたと言えばいいだろう。
・・・だんだん思考が浮気男のような思考になってきている気がしなくもないが、これも俺の自立のためだ。
「じゃあそーくん・・・抱きしめて!」
「えっ」
いきなり・・・!?
いや落ち着け、最近要求されている子作りなんていうのに比べれば小さいことだ。
こういうところでしっかりと愛情に答えないといけない、無論俺だって初音に対して恋愛感情はあるためその表現は重要だ。
俺は初音のことを抱きしめた。
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