第774話小姫からの提案

 その後は小姫さんに協力してもらい、上手く初音たちにバレることもなく数日間をかけて俺が受けられるバイトを見つけることができた。

 俺一人だったらすぐににバレていただろうが、やはり年上の先輩、頼れるところはしっかりとあるようだ。


「ありがとう小姫さん、これで俺も晴れて自立できそうだ」


「べ、別に?」


 本当に助かった。

 俺は早速このバイトに応募した。

 応募したバイトというのは、カフェのバイトだ。

 カフェなら筋力は入らず力仕事もあまりない、

 体力は多少いるかもしれないが、初音たちと日々を過ごしている俺からすればそんなものはしんどいのうちに入らないと小姫さんに言われた。


「本当に完璧だ」


 これでとうとう俺も自立というものをすることができる。


「・・・私も一緒にバイトしてあげよっか?」


「・・・え?」


「だ、だって君一人じゃバイトなんてできないでしょ?」


 ・・・はい?


「な、何言ってるんですか!できますよ!」


「はぁ?できないように見えるから私が手伝ってあげようかって言ってんの、理解できないの?ちょっと先を考えることもできないなら仕事なんてできるわけないじゃん、仕事未経験なんだから大人しく私の手伝い受けときなよ」


「うっ・・・」


 小姫さんの言っていることに何一つ間違いはないんだが、どうにも見下されているような気がして少し納得ができない。

 ・・・そうだ。


「俺と小姫さんだけが出ていっていたら初音たちに何か変な疑いをかけられるかもしれない、その辺は何か考えてる・・・んですか?」


「そんなの私は一応ちゃんと週4ぐらいで学校に行ってるんだから部活が忙しくなったとかって言って君のバイトの時間と合わせれば良いだけじゃん」


「な、なるほど」


 一応しっかりと考えてはいるらしい。

 ・・・もしかすると思っているより小姫さんは賢いのかもしれない。


「そう言えば私、人生で彼氏できたことないんだよね〜」


「・・・そ、そうなんですか〜」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 なんだこの空気は。

 というかいきなりそんなこと言われても返答に困るに決まってるだろ!


「なんでそこで黙るわけっ!?」


「えっ・・・」


「最低!クズ!バカ!」


「そんなに言われないといけないのか!?」


 小姫さんでもクズなんて言われたのは初めてだ。


「あっ、違う・・・別に君のことクズなんて言いたかったわけじゃないんだけど」


 その後しばらくの沈黙があった。

 ・・・クズは流石の小姫さんでも言い過ぎだと思ったのだろうか。


「・・・ごめん、言い過ぎたよ」


 ・・・っ!まだ良心があったことに感激だ。

 これなら───────


「から」


「・・・から?」


「私のこと叱ってくださいぃぃぃぃ」


「なんか良くない方向に進んでる!?」


 こうして俺と小姫さんは一緒にバイトを始めることになった。

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