第770話子作りの展望

「ん〜❤︎スッキリしたね〜?いっぱい頑張ったね〜」


 初音は俺の頭を撫でた。

 俺は今、まさに精魂尽き果てると言うものをこの身を持って体験させていただいている真っ最中だ。


「そーくんの情けない顔いっぱい見たおかげで私もスッキリしたよ〜、そんな顔何されたとしても私以外に見せたら・・・殺しちゃうからね!」


 可愛く言っているが初音の場合は本当に俺のことを殺すだろう。

 アニメとかなら可愛いで済むのにな・・・


「そろそろ子作りしたいよね〜」


「・・・・・・」


「ね〜」


「・・・・・・」


「え?私今共感求めてるんだけど?」


「え、あ、あー、えっと・・・」


 こっちはそれをわかった上で無視してるんだが・・・なんでこんな時だけいきなり天然鈍感みたいになるんだ。


「ま、まぁ、将来的には、そうかもなー」


「かも・・・?何?まだ私の愛情伝わってないの?伝わってないならもっと──────」


「そ、そうだな、合計でもう1年以上付き合ってるわけだし、そろそろそう言うことも視野に入れてもいいかも、だなー」


「そうだね〜」


「・・・・・・」


 そんなわけないだろ!

 高校生で子作りなんていくらなんでも早すぎる!

 とは言えないのが歯痒い。

 ・・・というか今まで散々言ってきたのに全く意見が変わっていないことに驚きを隠せない、その精神力はどこからきているんだ。


「まぁ、そーくんも反省できたみたいだし、一旦家に戻ろっか・・・本当は他の女がいるところになんて居て欲しくないんだけど、いつまでもここにいるわけにはいかないしね、立ってそーくん!」


 俺が椅子から立つと、初音はすぐに俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

 ・・・今は体力がないため正直立っているだけでもキツいものがあるがそんなことも言ってられない。

 俺と初音はエレベーターを使い自分達の部屋の階層まで登った。

 そして自分たちの号室の前まで行く。

 すると・・・


「・・・あれ」


「・・・あなた、今頃帰ったの?」


 月愛が俺たちの家の目の前に居る。

 そうだ、今日は家庭訪問に来るって話だったな・・・もう放課後なのか。

 もう放課後・・・ということは俺は数時間も初音にあんなことをされてたのか。

 ・・・あんまり考えないようにしよう。


「・・・あぁ、ちょっと色々あってな」


「そう」


「ちょっとそーくん、何当たり前みたいに他の女と話してるの?」


 初音にそう言われてしまうが、これに関しては反論の余地がある。


「前に月愛だけは友達で居ても良いって言ってくれただろ?」


 そう、俺は前に初音から許可を得ている。

 そのためこれに関しては俺の方に分があるというわけだ。


「確かに言ったけど、家にまで連れ込んで良いとは一言も言ってないよね?」


「ちょっと待て!なんで俺が連れこんだことになってるんだ!」


「そうじゃないの?」


「違う!」


 俺は初音に事情を説明した。


「あー、そんな面倒なことになっちゃったんだ・・・じゃあ問題なかったって言ってくれれば助かるんだけど」


「見てもいないのにそんなことわからないわ、一応確認させてもらうわよ」


「はぁ・・・私とそーくんの愛の巣に土足で入ってくるなんて」


「ちゃんと靴は脱ぐわ」


「は・・・?」


 初音は調子を崩されつつ、仕方なく月愛のことを家にあげた。

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