第768話初音、恐怖の電話
俺はすぐに場所を変えて初音からの電話に出た。
こういうことは付き合ってたときによくあったからすぐに人気のないところを見つけるというのはある種特技になっている。
「はい」
『・・・ねぇそーくん、疑ってるわけじゃないけど聞いてもいい?』
「な、なんだ・・・?」
この話の入り方の時点でもう俺にとって嬉しい話である可能性は完全になくなった、つまりこれから話しても俺が笑顔になることは絶対にない。
・・・ははっ。
『なんであの女も家に居ないのかな?』
「あ、あの女って・・・?」
俺は分かりきったことを聞いて少しでも初音が怒り出すまでの時間を伸ばす。
『あゆとかいう女だよ、なんで家に居ないの?』
「な、なんでだろうなぁ」
『・・・もしかして、今日いきなり学校に行きたいなんて言い出したのも、あの女と一緒に学校に行くためだったりしないよね?』
「そ、そんなわけないだろ?」
もちろん初音には学校では恋人、なんてことは言っていない。
そんなことを言った日には俺は殺されてしまうからだ。
それを言っていないのにこんな怒り口調で問い詰めてくるんだ、バレたら本当に殺されてしまうんだろう。
『・・・調べたら分かるんだよ?』
「・・・・・・」
『今白状したら許してあげなくもないけど?』
「・・・実は、あゆと登校、しまし、た」
俺は渋々白状した。
もし今を逃したら本当にどうなっていたかわからない。
『ふ〜ん、そーくん』
「は、はい!」
『学校の校門前で待ってて』
「・・・はい」
そう返事をすると通話は途切れた。
・・・こ、怖すぎる。
校門前に向かいたくない・・・
「もう電話は終わったのかしら?」
遠くから俺のことを見ていたのか月愛が俺の方に寄ってきた。
「あ、あぁ」
「なんの電話だったの?」
「・・・今から帰ってきてみたいな旨のメールだ」
「白雪さん?」
「まぁ・・・」
心臓がバクバクどころではないほどバクバクしている。
「そう、あなたも苦労してるのね」
「・・・・・・」
「住所だけ教えておいてもらってもいいかしら」
「・・・え、住所?」
「えぇ、さっき家庭訪問をお願いされたでしょう?」
「ほ、本当に来る気か!?」
あんなところに入ったら常識人の月愛がどうなるかなんて想像がつかない、もしかすると俺のように被害者になってしまうかもしれない。
「何?来られたらまずいの?それとも年頃の男の子だし、見られたくないものでもあるのかしら」
「いや・・・月愛のために言うが、来るのはおすすめできない、本当に気がおかしくなってもおかしくない」
「ますます行きたくなったわ、住所を教えてくれる?」
「・・・・・・」
・・・一応先生にも脅しのようなものをかけられてしまってるし、ここで反抗することはできない、か。
俺は月愛に住所と何号室かを教えた。
「わかったわ、じゃあ・・・一旦さようなら」
月愛は俺の前から去り、教室に戻っていった。
「・・・そうだ、一応あゆにも連絡を入れておかないとな」
俺はあゆに帰らないといけなくなったという旨のメールを送り、覚悟を決めて校門前に向かった。
「眩しっ・・・」
校門前に着くと、日差しがこれでもかというほど差していた。
最近引きこもっていたせいか、日差しが眩しくて仕方がない。
「・・・そーくん」
前をよく見ると、もう初音は着いていたらしい。
「初音、悪かっ──────」
「監禁コースだよ」
「・・・へ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます