第765話女難

「赤ちゃん・・・?・・・は?お、俺が!?」


「先輩以外にここに赤ちゃんみたいな人いなくないですかぁ?」


「なんでここは高校なのに赤ちゃんがいることが前提みたいに話してるんだ!赤ちゃんみたいな人なんて居ないだろ!」


「いますよ〜?私の目の前に♪」


「おい!」


「仲が良いのね」


「嫌味か!」


「嫌味よ」


「ぐっ・・・」


 なんというか・・・本当にペースを崩される2人だ。

 月愛も俺の身の回りの中では比較的常識人なんだが、それでも多分普通とは少しだけずれているところがあるように感じる。


「そろそろチャイムが鳴る頃じゃ無いかしら」


「わぁ!本当ですね!そろそろ教室戻らないとっ!」


 そういうとあゆはすたすたとこの教室を後にした。

 その後少しの沈黙が生まれたが、月愛がすぐにその沈黙を破った。


「あなた・・・どうして二股なんてしたの?本当に彼女が言っていた通り彼女の涙に惑わされてしまったからなの?」


「いや・・・う〜ん」


「白雪さんはこのことを知っているのかしら」


「・・・知ってる、というか知られてしまったから俺が学校に登校できなくなっていたというか」


「・・・やっぱりただの怪我ってだけじゃなかったのね」


 普通に考えて骨折だけで2週間ほどなら自宅療養とかもあり得るのかもしれないが1ヶ月以上も家に休むというケースは持病が無い限りほとんどないだろう。


「その白雪さんも一緒に学校を休んでいるということは、2人で学校を休んで仲良くデートでもしていたのかしら」


「・・・実は──────」


「まさか高校生で同棲なんてしてるわけないでしょうし」


「・・・実は、だな──────」


「しかも仮に白雪さんと話していたとしてもその他の友人と話せていないなら色々と今後の人間関係にも影響があるかもしれないわね」


 こんなにも意図せずして事実を言いにくい状況を作られることがあって良いのか・・・だが月愛なら信用できるし、仮にバレてしまった時に何故今まで言わなかったのかということで不審に思われてしまう可能性もある。

 俺は初音と同棲していること、そして初音以外の友人とも同棲していることを告げる。


「あなた・・・もしかして女遊びが好きなの?」


「そんなわけないだろ!」


「そうよね、あなたにそんな度胸があるようには見えないわね」


 いちいち一言余計だな、まぁその通りなんだが。


「・・・あなたって、モテるの?」


「え?モテるというか・・・」


 ・・・俺はモテてるんだろうか。

 一応複数人の女子から好意を向けられているという点ではモテていると表現できるかもしれない。


「・・・いや」


 違うか・・・俺のはそれこそ女難ってやつだな。


「そう」


「・・・はぁ」


 前世で何をしたらこんな刑に処されてしまうんだ?


「疲れているようね、同棲している人たちのせいかしら?」


「・・・まぁ」


「そう、確かに白雪さんだけでも大変そうなのにあと複数人も居るとなると骨が折れそうね」


 骨どころか無くなってはいけない部位までもが無くなっていてもおかしくない、少なくとも俺の常識感覚は確実に麻痺に追いやられてしまっているだろう。


「まぁ頑張ることね」


 その曖昧な応援と同時にチャイムが鳴り、月愛は自分の席に戻っていった。


「何をどう頑張れっていうんだよ・・・」


 そして休み時間、担任の七海先生が俺と月愛を呼び出した。

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