第761話今は恋人

 そして次の日、あゆと学校に登校すると約束した日となった。

 本日初音をどうやり過ごせばいいのかは、ついさっきあゆに教えてもらったため、俺はそれを実行する。


「初音、ちょっと今日学校に登校してもいいか?」


「え?なんで?もう行く必要なんてないのに?」


「いや・・・男子だけ体育のテストがあるってメールで連絡が来て、そのテストに参加しないと単位が貰えないらしいんだ」


「うん、だから前にも言ったけどそーくんには学歴なんて必要ないんだって、ただ一生私と一緒に居てくれるだけでいいんだから」


「そのことなんだが、俺は学歴欲しさに学校に行くんじゃないんだ」


「じゃあ他になんの目的で行くの?」


 ここまではあゆに言われた通りの構成だが、ここからはあゆに自分で考えてくれと言われてしまったから少し考えたが、俺はやはり嘘偽らず本音で語るのが良いと思った。


「高校生活、学校で初音たちと思い出を作るためにだ」


「そーくん・・・」


 これには初音も感銘を受けてくれたのか、どこか遠い目をしてそんな声を小さく出した。

 そう、高校生活、せっかくのそんな貴重な時間を家で過ごすのはもったいない。

 もちろんそれが悪とは言わないが、せっかく学校という場所があるのなら、そこで思い出を作るのもきっと将来のために──────


「初音たちとって、何?」


「・・・え?」


 ・・・あれ、思っていた雰囲気と声音が全く合っていない。


「今、そこで初音との、って言ってくれたらものすごく嬉しかったし、喜んで頷いてたんだけど、なんで初音たちとの、なの?」


「・・・あ」


 しまった・・・


「なんで私と、だけじゃなくて他の人間とも思い出なんて作ろうとしてるの?私だけじゃないの?」


「ま、間違えた!初音と、初音とだ」


 本音で話すとは言ったがそこまで本音にならなくては良いだろ俺・・・!


「間違えなのはわかってるよ、むしろそれが合ってた時の方が大問題だもんね、でも今ので私ちょっと不安になっちゃった」


「え・・・?」


「不安になっちゃったからキス、して?」


「・・・・・・」


「いいでしょ?ただでさえ最近してないんだからっ!」


「くっ・・・」


 キス・・・もう合計すると1年以上付き合ってるんだ、普通に考えてキスくらいはするべきだ。

 ・・・が、今は浮気をしてしまっているため純粋な気持ちで行動に移せない。

 ・・・いや、それは言い訳だ、いきなり言われると普通に俺が恥ずかしい。


「ん」


 初音は顔を差し出してきた。

 ・・・俺は恥ずかしがりながらも、初音のその誘いに乗った。

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