第756話結愛によるディープキス

 結愛はどうしても今ここで俺からの回答を得る気みたいだ。


「え・・・っと」


 というかこの状況、普通に他の誰かに見られでもしたらそういう変なことをしようとしているのでは無いかと疑われてしまうかもしれない。


「どうなの?」


「・・・・・・」


 俺がなぜ今こんなに黙ってしまっているのか、それは結愛の言うことにも一理あると思ってしまっているからだ。


「・・・それ、も一つかもしれない」


「一つじゃなくて、それしか無いと思うよ?他にあの虫と私の違いがあるって言ったらなんだろうね、優しさだって普段から私の方がそーちゃんに仲良くしてると思うんだけどな〜」


「確かにそうかも・・・だが」


「だがじゃないよ、そーちゃんは恋愛って言葉の意味わかってるの?恋愛は命が惜しくて怖いからする対処療法じゃ無いんだよ?」


「っ・・・!」


 その言葉は今まで初音に殺されることをしないようにしないようにと気をつけてきた俺の考え方そのものに刺さる言葉だった。


「そ、それは・・・」


「そーちゃん、もうあんな虫のことなんて見限っちゃおうよ、元々昔は私とそーちゃんの2人だけだったんだし、昔は小学生ながらの簡単な感情でそーちゃんに嫉妬しちゃったり、今ではそーちゃんがあんな虫と何回別れてって言っても別れてくれないから変なことしちゃったりしたけど、私の本質がそうじゃ無いのはそーちゃんもわかってくれてるよね?」


「・・・わかってる」


「じゃあ・・・どうすればいいかわかるよね?」


 ・・・初音と別れる。

 考えなかったわけじゃないが、やはり決行するとなると勇気がいるものだ。

 それに・・・


「初音にだって良いところが──────」


「それDVされてる人とかがよく言うことだよ?」


「ぐっ・・・」


 確かにそう言うことを聞いたこともあるから何も言えない。


「試しに今、恋人らしいことしちゃおっか」


「え、何を──────ん」


 結愛は俺の唇を塞いだ、自分の唇で。

 ・・・え。


「ん!?」


 結愛は全く躊躇なく俺の唇と自分の唇を重ねた。

 しかも5秒くらい経っても全くやめる気配がない。


「・・・・・・」


「ん・・・!ん!?」


 そして20秒後ようやく・・・


「んっはぁ、こうしてる時が一番幸せだね〜」


「はぁはぁ・・・」


 20秒間もなんて・・・


「ど、どういうつもり──────」


「とにかく、もう自分の本音は、私が言ってあげなくても気づいてるよね?気づいたらどうすればいいか、行動で示してね」


 結愛はそう残すと洗面所から立ち去った。


「・・・・・・」


 改めて考え直す必要があるのかもしれない。

 初音への気持ちについて。

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