第752話変わった関係性

「そもそもフィクションの世界でもファンタジーの世界なのに、そんなのが現実で流行るわけないでしょ?」


「そんなことは私だってわかっています!だからそれをお兄様に教えて差し上げなければと──────」


「わかってないって、婚約破棄は娯楽小説としては今流行ってるからあながちそれも間違いじゃないんだって、ちょっと置き換えて考えたら?」


 小姫さんは霧響が相手でも変わらず強気な態度で接する。

 ・・・言い方は良く無いかもしれないが俺が何を言ったところで騙されているだけと片付けられてしまっていただろうから、小姫さんが代弁してくれたのはとてもありがたい。


「なるほど・・・そう言うことでしたか、すみません、私が早とちりをしてしまいました」


 納得してくれたみたいでよかった。


「ですが」


「ですが?」


「お兄様が私との婚約を認めてくださるまで私は絶対に諦めませんからぁ〜!!」


 そう言うと霧響はベランダの方に走って行った。

 本当にあの考え方さえなければシスコンではないが最高の妹だと自慢できるのにな・・・


「・・・ん?」


 俺と霧響の話が終わったところで初音はふと周りを見て何かに気づいたかのような素振りを見せた。


「どうしたんだ?」


「・・・今ここには霧響ちゃんも居ないし、あの幼馴染とか言ってそーくんに擦り寄ってくるやつもいない、ってことは!?」


「てことは・・・?」


 どういうことなんだ・・・?


「今ならそーくんと邪魔なくイチャイチャできるんじゃない!?」


「え」


 初音は俺のことをベッドと勘違いでもしているのかと思うほどに俺にダイブして来ようとしてきたが・・・


「私がいますよ〜♪」


 あゆが初音のことを軽く押し出してそれを未然に防いだ。


「・・・忘れてた、最悪」


「あはっ♪」


「本当、一年前のうちにそーくんのことをどこかに監禁でもしておくべきだったよ、そーくんなら浮気なんてし無いって何度も信じて何度もそーくんを解放した私が馬鹿っだったね、一年前に戻れるなら昔の私に何があってもそーくんを一生監禁するように伝えたいよ」


 その世界線の俺にはどうにか頑張って強く生きて欲しいものだ。


「ねぇねぇ初音先輩、先輩のこと1日貸してくださいよ〜、元々今日は私が貰い受けるってことだったんだし〜」


「は?もうあんなの無効に決まってるでしょ?どっかの誰かさんが警察沙汰になんてしなかったらこんな有耶無耶になんてならなかったんだけど?っていうかあげるなんて一言も言ってないけど?」


「えぇ〜、あっ!もしかして初音先輩、たった1日でも私が先輩と居ると先輩が私と恋人になるって思ってるんじゃ無いですかぁ?私に魅力があるから、も〜!そうならそうと言ってくださいよ〜」


「そんな挑発に乗ると思ってるの?誰が何と言おうとそーくんは私とずっと居るの」


「またまた〜、照れ隠しでそんなこと言って〜」


「ぁ・・・?」


 気のせいだろうか。

 少しだけ、初音とあゆの関係性が向上しているような気がする。


「・・・いや」


 気のせいじゃないか、呼び方だって変わってるもんな。

 何があったのかはわからないが、頼むからこの調子で殺し合いなんて変なことはしないように頼みたい、そんなのはもう今回の警察沙汰だけで懲り懲りだ。

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