第750話結愛の絶望

 突き詰めてわかったことは・・・あゆは本当に俺と恋人になろうとしているということだった。

 ・・・どうしてこうなってしまうんだ。

 確かに今までもそんなことは言ってたし校門前でも泣くほどに愛情があるようなことは言っていたがそれでも今までのあゆはどこかふざけているというか、真面目に恋人になろうとするなんて素振りは見せなかったのに・・・


「何をそんなに驚いてるんですかぁ、今までだって内心ではそうだったんですよ〜?ただ我慢してただけで」


「はぁ、最悪、もっと別の方法やれば良かった・・・」


 初音は何かを後悔してるような面持ちで言う。

 ・・・本当に何を言ったんだ。


「えぇ〜、なんでですかぁ、初音せんぱぁい、私に本当の気持ちを思い起こさせてくれたあの熱い時の先輩はどこ行っちゃったんですかぁ!」


「だからあれは仕方なくあぁしたんだって、私の気持ちはずっとそーくんに集る女は嫌いだしなんなら消えて欲しいと思ってるんだから」


 本当にそんな恐ろしいことを堂々と言える精神力は凄まじいと表現するほかないな。


「あ、先輩先輩!今までは思い出作りに執着してた私なんですけどこれからは恋人になることを目標とさせてもらうのでっ!よろしくお願いしま──────」


「ふざけないでよっ!」


 あゆが自分のことを改めて宣言し挨拶を決めようとしたところで結愛がそれを制する声を放った。


「びっくりしたぁ、どうしたんですぅ?」


 あゆは純粋に疑問に思ったらしく結愛にそう問いかける。


「みんなみんな・・・一番最初にそーちゃんのことを好きになったのは私なのに、なんでみんな私の邪魔をするの?」


「ゆ、結愛、落ち着い──────」


「落ち着いてって言うならそーちゃんも早くこんな虫となんて別れちゃってよ!そうしたら落ち着くどころか2人で楽しくなれるんだからっ!」


「ゆ、結愛・・・」


 結愛は強くそう言うと俺の部屋に駆け込んで行った。


「はぁ、そーくん、あんな奴のことなんて無視して私が帰ってきたことをもっと喜ぶことに専念し──────」


「先輩先輩、こんな人たちと居ても先輩の望む普通の恋愛はできないと思うんですよ〜、でも!私ならそんな先輩の望みを叶えてあげることができるんですっ!はぁ〜、なんて素晴らしい逸材なんでしょうねぇ〜!」


「な、なんでちょっとセールス風なんだ・・・」


 それにちゃっかり自分は普通みたいに言っているが少なくとも今までの経験から考えるのであればあゆだって十分異常者だ。


「そんなことより今度──────」


「な、なんですかこれ!!」


「えっ・・・?」


 

 あゆが何かを言いかけたところで、リビングの方から珍しい霧響の大声が聞こえてきた。

 霧響が大声を上げるなんて・・・何事だ?

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