第749話帰ってきた初音

「そーちゃん!もう夜にもなってきたし脱ぎ脱ぎしちゃおっか!」


「は、は!?な、なんでだよ!」


「えっちなこと考えたでしょ〜?違うよ〜?純粋にお風呂に入らないとってだけだからね〜、ほら!一緒に行こ!」


 結愛は俺のことを部屋から追い出し、強制的にお風呂場へと繋がる廊下に連れ出してきた。

 はぁ、初音がいなくなるとわかってからずっとこの調子だ。


「脱衣所入るよそーちゃん!」


 結愛が脱衣所のドアを開ける前に、玄関からガチャ、という開錠した音が聞こえてきた。


「え?」


 俺と結愛は疑問に思い、すぐに玄関前に向かう。

 玄関前に着くと、そのタイミングでドアが開いた。


「えっ、そーくん!?もしかして出迎えてくれたの!?」


「えっ、は、初音・・・!?」


 ドアの先に居たのは、今一番考えられない可能性であった初音だった。


「そーくんっ!」


 初音は靴を脱ぐこともせずに俺に抱きついてきた。

 隣に居る結愛はその初音とはまさに真逆、さっきまでの遊園地にでも来ているのかという喜びの感情が消え去った困惑と無を合わせたような感じになってしまっていた。


「え、ど、どうして・・・?」


 そのままとうとう思いを口にした。


「あの女が自分を犠牲にしてまで私とそーくんを離れさせるなんてことしてきたせいで不安にさせちゃってごめんね!大丈夫だからね、私は何があってもそーくんから離れたりしないからっ!」


 が、初音はそんな結愛の疑問を無視して俺の全身を撫でるようにして無茶苦茶に触ってきた。


「ちょっ、は、初音、落ち着い───────」


「なんで帰ってきてるの?」


 結愛は初音の腕を強く掴んで言う。


「なんでって、私がそーくんから離れるわけないでしょ?」


「・・・やっとそーちゃんと2人になれたと思ったのに」


「そーくんが私以外の女と2人になんてなる未来は無いし、それが例え昔から一緒に居ただけなんて運が良かっただけなのを良いことにそーくんにしがみ付こうとしてるだったとしても、幼馴染は幼馴染でしか無いからね」


 俺は今初音に抱きつかれてしまっていて初音の表情は見えないが、少なくとも声音は俺に向けられたものだったとしたら俺は戦々恐々としているような声音だ。


「っ・・・とにかくそーちゃんから離れ──────」


「ちょっと〜!なんで1人でエレベーター乗っちゃうんですかぁ!」


「うわっ」


 ドアが突然開いたかと思うと今度はあゆが玄関に入ってきた。


「あ、あゆも?」


「はいっ♪考えを改めちゃったんです!」


「そ、そうなのか!?」


 あんなに決心固そうだったあゆが・・・一体この短時間で何があったんだ?

 ・・・ん?待てよ、考えを改めたと言うことは。


「じゃあ、もう別に俺に対して変なことを迫ってきたりしないよな?」


「あー、はい!もう今までみたいに思い出欲しさに無理に体の関係を迫ったりしませんっ!」


「そ、そうか・・・!」


 こ、これは大きい。

 何があったのかは知らないがこれで前よりかは色々と楽になる。

 あゆだって結構おかしなところはあるがきっとやろうと思えば常識人になれる良識は持って──────


「なので、今までは先輩が幸せになれば良いと思ってたんですけど、これからは白雪先輩から受けた助言を元にちゃんと先輩の恋人になることを目指して私も幸せになっちゃおってなっちゃいました〜」


「え・・・?」


 それから俺は色々とあゆに問い詰めた。

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