第744話警察沙汰

「はぁはぁ」


 あの初音がとても苦しそうな顔をしている、当然だ、自分のことを刺したのだから。


「あっ・・・自分のことを、刺しちゃいましたかぁ〜」


 あゆは一歩遅れてキッチンにやって来た。


「そう・・・っ、これなら、仮に私のことを刺せたとしても、そっちだってそーくんとは離れることになる」


「なるほどぉ、それが狙いですかぁ」


 そうは言っているがあゆは特に驚いた様子は無い。

 ・・・ここであゆが警察の人をこの家の中に招き入れたら2人ともが警察か留置所かはわからないがに連れて行かれ、あゆの目的も果たせなくなる、ということか。


「そういうこと、それが嫌なら、今すぐ警察を、追い返すこと・・・」


「ん〜、良いですよ〜?」


「っ!?」


 珍しく初音が本当に驚いた顔をした。

 あゆはその怪我をしている体でゆっくりと玄関に足を進めながら語る。


「確かに、白雪先輩が、居ない間に、私が先輩と付き合っちゃうのが理想的でしたけど、一番の最優先は・・・白雪先輩と先輩を、離れさせることっ、ですから」


 あゆは玄関のドアノブに手をかけた。


「あ、そうだ、先輩はベランダにある梯子を下にかけて自分の家に戻ってくださいね、ここに居たら先輩まで連れてかれちゃうので」


「ちょ、ちょっと待てよ!俺だって一応この場に──────」


「私がここまでしたって言うのに、先輩はそれを無駄にするって言うんですか?」


「っ・・・!」


 その言い方は・・・ずるいだろ!


「そうだね、そーくんまで警察行きになって変な冤罪かけられてそーくんだけが警察で私が釈放なんてことになったら離れ離れになっちゃうし、すぐ戻るからあの女たちがいて本当に地獄だと思うけどなんとか大事なものだけは守り抜いてね」


「・・・・・・」


 情けない、本当に情けない。

 こんなことを言われても俺はただただ言う通りにするしか出来ない。


「・・・わかった」


 俺はあゆに言われた通りベランダに向かい、そこに違和感があるほど長い梯子がすぐにかけられる状態でセットされていたので、俺はそれを下に降ろした。

 一歩手を滑らせれば死んでしまうが、前に霧響にベランダで最悪なことをされた時に比べれば全然怖くない。

 俺は梯子で下に降り、自分の家のベランダまで来た。


「・・・っ」


 鍵が空いてない・・・それはそうか。


「・・・・・・」


 はぁ。

 警察・・・まさかここまでになるなんて。

 本当に、この先どうなってしまうんだ・・・?


「桃雫さん!?霧響さん!?」


「そーちゃんの匂いがするんだって!」


「お兄様の気配がします」


 何かがベランダ越しに聞こえてくる。

 そして・・・


「あ」


「あっ!!」


 結愛はすぐに鍵を開け俺に抱きついてきた。


「そーちゃん!大丈夫!?変なことされなかった!?怖かったよねっ!もう大丈夫!私が守ってあげるからっ!」


「えっ、いや、えっと・・・」


 正直今はこれにツッコミを入れられる気概もない。


「どうしたの?」


「・・・実は───────」


 俺はさっき起きたことを全て結愛と霧響と天銀とよく見たら奥に居た小姫さんの前で話した。

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