第743話時間切れ
そんなこと言ってない!
そんな嘘をついて何になるって言うんだ・・・?
「へー、そうなんだー」
「え・・・」
「でもまぁ、それが何?それと私が今これから邪魔者を排除することなんてなんの関係もないよ、そんなの殺してからそーくんの考えを改めさせれば良いだけだしね、文字通り身を持って」
「えっ・・・」
・・・落ち着け、まだ大丈夫だ、今からでも誤解を解けば。
「待て、初音、今のはあゆの───────」
「せんぱい」
「え」
あゆは口パクで俺に「せんぱい」と言うようにゆっくりと口を動かした。
なんだ・・・?なんでここで俺のことを呼ぶんだ?
しかも口パクでって・・・
「何?そーくん」
「え、えっと」
な、何を言うんだったか・・・あぁ、そうだ、今のはあゆの嘘だったと言うんだった。
「・・・・・・」
あゆが訴えかけるような目で俺のことを見ている。
そうか、ここでもし俺が嘘だと言ってしまったらあゆが本当に初音に殺されてしまうのか・・・!
「な、なんでもない」
となるとこれは何も言わないのが吉・・・だが。
「え、いつもみたいに何か言い訳しないの?」
「・・・・・・」
「そっか・・・本当に言ったんだね」
待て・・・このままではあゆよりどちらかと言うと俺の命の方が危ない気がしてきた。
「そんなにそーくんに舐められてたなんて、私心外なんだけど」
「えっ」
「帰ったらもう2度と私以外の女で気持ちよかった、なんてこと言えないようにしてあげるね」
「ぇ」
怖すぎて本当に「え」しか出てこない・・・
「あ、でもその前にそろそろ手足両方邪魔だし切断しちゃおっか?」
「・・・え?」
いや・・・本当に「え?」だ。
「今まではそーくんからもしてもらいたいって思ってて、そんなことしてこなかったけど、他の女にちょっかいかけちゃうような手なら切り落とした方が良いよね」
「ちょ、ちょっと待て、そんなことしたら・・・」
「あ、大丈夫だよ?ちゃんと止血はしてあげるから」
「い、いや、そうじゃなくて──────」
「じゃあ白雪先輩、さよならです」
「・・・え?」
「時間切れ〜♪」
玄関のドア越しから声が聞こえてきた。
「通報があったのでこちらに伺いました、事情をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「えっ・・・」
本気なのか・・・流石に仕込み、にしては本当に自分のことを刺してるし、やりすぎな気もする。
・・・ということは本当に警察を呼んだということだ。
「ちっ・・・」
初音は小さく舌打ちをした。
いかに初音と言えどこの状況は辛いものがあるんだろう。
「こうなったら・・・」
初音はキッチンへと駆けていった。
この期に及んでまだ何か考えがあるのか・・・?
「・・・っ!」
あゆは何かに気づいたのか初音のことを追おうとしたが、あゆと言えど自分のことを包丁で刺した後で動くのは辛いものがあったのか、あゆは動けないでいた。
な、なんだ?初音は何をしようとしてるんだ?
俺は初音の後を追いかけてキッチンに入り・・・それを見た。
「え」
そこには自分の左太ももを包丁で刺している初音の姿があった。
「・・・・・・」
あゆほどではないが、出血はしている。
・・・え?
「私がそーくんから離れるなんて絶対に有り得ない・・・絶対に」
その声からは強い信念を感じ取ることができた。
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