第740話画した一線
あゆは何を狂ってしまったのか初音がいるというのにベランダを開けた。
・・・何してくれてるんだ!
約束を破ってまでここに来たってことは絶対に何かしらトラブルとか不満があってのこと、そんなの絶対に良いことなわけがない。
「白雪せんぱ〜い、別にベランダから入ってこなくても何か言いたいことがあったならインターホンとかでよかったんですよ〜?ってゆか約束ではこの1日は先輩は私のですよね〜?」
「別に同棲するってだけであってそーくんが私以外の誰かのものになるわけなじゃないし、あんな写真送っといてそんなこと言うの?」
「あんな写真・・・?」
「ほら、先輩とベッドの上で撮ったツーショットですよ」
「あー、あの写真か〜・・・って、えぇ!?」
待て待て待て、いつの間にそんなことをしていたんだ・・・っていうか最悪すぎるぞそれは!
「そーくんも心当たりあるんだね、じゃああれは合意ってことなのかな?」
「ま、待て待て違う!あれは・・・合意、って言うか──────」
「よいしょっと」
あゆは懐から何かを取り出すとそのボタンを押し込み・・・
『あゆとすることにする』
今絶対に流されたくなかった音声が流されてしまった。
「そーくん?」
「これは・・・」
「私がちょっとご飯抜きだって言っただけで先輩は私とそう言うことをすることでその状況を打破しようとしたんですよ〜」
「そうなの?」
「いや・・・!そ、そんな軽い感じじゃなかっただろ?」
「いえいえ〜、恋愛に比べればちょっとご飯抜きなんて軽い感じじゃないですかぁ」
・・・何も嘘はついていないがなんだか印象操作されている気もする、でも嘘はついてないから何も言えない。
なんだこの理論武装は。
「まぁいいや、私が聞きたいのは一つだけなんだけど・・・出したの?」
「うっ・・・」
やはり聞かれてしまうのか・・・前回はまだその一線は超えてなかったから今現在命はあるがもし出してしまったなんて言ったら多分命は無い。
ここは嘘をついてでも出していないことにしよう。
「その一線は超えてな──────」
「その反応でわかったよそーくん」
「え」
「とうとう超えちゃったね」
初音は俺のことを虚空の目で見つめている。
その目からは怒りも悲しみも、ましてや楽しみなんていう感情を感じられるわけもない。
「こうなるともう後は本当に私がそーくんの子供を授かるぐらいしないと罪から免れることはできないよ?」
「いや・・・か、仮に肉体的にそうなってしまったとしても、精神的には負けてないんだ!本当だ!」
「そんなの当たり前でしょ?そーくんが私以外に心を奪われるのが無いなんて言うのは大前提、なんでそれだけのことでそんなに息巻いてるの?」
「ぅ・・・」
一年前の初音ならこれだけで多分ちょっとは気分を良くしてくれてたのにな・・・やはりもう状況がかなり変わってしまったからか全然許してくれる気配が無い。
「それにしても本当にそーくんがなんで私と子供を作ってくれないのかが本当にわからないんだけど」
「え・・・」
「最近ちょっと色々調べてたの」
「調べてた・・・?」
「うん、人が子供を作りたく無い理由とか」
そんなことを調べてたのか・・・
「そこで出てきたのって自分が将来お金が稼げてないか不安とか、育児に時間を使われるのが今は嫌とか、そんなのばっかだったの」
まさにその通りだ。
子供を作ったなら育児に時間を使われる覚悟ぐらいはもちろんするが、お金を稼げて無いか不安というのはまさに俺の意見だ。
「でも、私お金は私が養ってあげるって言ってるし、育児の時間だってそーくんには浮気しないなら自由になんでも遊んでいいって言ってるし・・・そーくんちょっとおかしいよ?」
「おかしくない!」
なんで俺がおかしいと言われないといけないんだ、しかも初音に!
「大体今の話って社会人の人の意見だろ?確かに俺の意見もちょっとそこにはあるけど大前提俺たちは学生なんだ、それが一番の理由だ」
「学生だと何か問題なの?世には学生の時から子供を作ってる人だっているよ?」
「全員がそうとは言わないがでも学生時代に子供を作ったりすると金銭面とか法律的なもので色々とややこし───────」
「何度も言ってるけどお金なら絶対に困ることはないし法律だって問題無いって言ってるの」
本当になんでこんなにも伝わらないんだろうか。
「ちょっと〜、私も──────」
「黙ってて」
あゆが話に参戦しようとすると初音は軽くポケットナイフをあゆの方に投げた、が当然の如くあゆはそれを避けた。
「あぶな〜い、でも目標達成〜♪」
「目標・・・?」
あゆは初音が投げたポケットナイフを拾い・・・突如。
`ザクッ`
「・・・え”?」
自分のことをそのポケットナイフで刺した。
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