第738話あゆの味噌汁
「はぁ!もう!先輩!早くこれ食べてください!」
「は、は?み、味噌汁・・・?」
なぜか俺はあゆの家のリビングに連れられあゆが手早く味噌汁を作ったかと思えば俺の目の前に持ってきた。
「な、なんて味噌汁をこのタイミングで・・・?」
「良いですから!先輩には早く元気になってもらわないと困るんです!」
「俺は別に体調不良なわけじゃない!」
「だったらさっさと元気にしてくださいよ!」
「うるさい!」
はぁ・・・。
・・・はぁ、ため息をしてもしてもし尽くすことができないぐらいにはもう疲れている。
俺の頭の中は今現在これは浮気に当てはまるのか、出してしまった、初音にバレたら、などの雑念だらけだというのにあゆの対応でさらに体力が消耗されてしまうが、体力が消耗されるなら余計にご飯は食べれるときに食べておいたほうがいいか。
さっきみたいにまたいつ閉じ込められるかわからないしな。
「・・・・・・」
俺は目の前の味噌汁をありがたく食すことにした。
「・・・美味しいな」
いつもはあゆがご飯を作ったりすることはあまりなかったが、いざ食べてみるとやはりあゆも料理が上手だ。
「え、え?そ、そうですか・・・?う、嬉しい・・・じゃなくて!そんなこと言ってる暇あったらさっさと元気になってください!この女たらし先輩!」
「なんで俺が女たらしなんて言われないといけないんだ!」
「実際にそうじゃないですかぁ〜」
「この・・・」
本当になんで俺が女たらしなんて言われないといけないんだ。
確かに何故か周りに女子が多くいるのは最近自覚し始めてるが俺のこの状態でそんなことを誇れるわけもないしなんなら俺は求めてない。
・・・だが。
「・・・・・・」
この味噌汁は本当に美味しい、なんだこれは。
この透き通った白ごはんに何にでも合うかと思わせるような味噌と野菜の組み合わせ。
「・・・あれ、先輩?な、なんともないんですか?」
「な、なんともないって・・・?」
「まさかとうとう耐性を・・・」
あゆは何かをぶつぶつ言っているが、そんなことがどうでも良いぐらいにこの味噌汁は美味しい。
「もうこの味噌汁の味だけで毎日生きたいな・・・」
細かいしがらみとかは全部無くしてこういう幸せなことだけに興じて生きていたい・・・まぁそれは不可能なんだが。
「・・・え?」
「・・・ん?」
「え?え!?」
「な、なんだよ?」
あゆがいきなり疑問を抱いているかのような表現をした。
「プ、プロポーズ!?」
「いやなんでだよ!」
「毎日味噌汁作ってくれって・・・」
「ちょっと待てそんなこと言ってない」
「え?でも同じですよね、毎日私の味噌汁食べたいってそういうことですよね?」
「い、いや・・・」
「もう〜!奥手なんですから〜!そんなこと言われたら別にまだ結婚願望まではなかった私にも結婚願望が芽生えちゃいますよ〜?」
「ほんっとうにやめてくれ!!!!!」
ただでさえ手一杯なのにあゆまでそんなことになったら俺は本当にどうすればいいんだとなってしまう。
「・・・先輩のくせに私をドキドキさせ───────」
`カンッ`
「え!?」
「来たっ♪」
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