第723話小姫さんと大学の話

「それで、私と何を話したいの?」


 一応形的には話したいって言ったのは小姫さんなんだけど・・・それも俺が小姫さんと話したければという条件付きでのこと、間違ってはないか。


「・・・俺の落ち着きどころがないってことについて今落ち着いて話したい、です」


 俺は肩の荷を下ろすように言う。


「落ち着きどころ?あー、確かにみんなあんたに求愛してるメスばっかだもんね〜」


 言い方というものを知らないのだろうか。


「まぁ?その点私は絶対そんなことにはならないから安心してくれて良いけど」


「わかってますよ!」


 そこまで自意識過剰じゃない。


「え、わかっちゃったの?」


「え?」


「別に、なんでもないけど、あんたって大学行くの?」


「・・・大学?」


「そろそろ考えてるんでしょ?」


「それは・・・行きたいけど」


 結愛・・・はともかく初音と霧響と言う壁を突破しないと俺は大学というところに行くことすら叶わない。

 学力の問題とか家のお金事情とかのせいで大学に行けないならまだ諦めもつくが、こんな理由で諦めが着くはずもない。


「ふ〜ん、あんたみたいなの大学行ったら絶対ぼっちになるよ」


 なんでそんな嫌なことを言うんだ。

 それに仮にぼっちになってしまったとしても、大学に行けるだけありがたいって考えるし、それはあんまり気にしないだろう。


「だから、私と同じ大学来たら?」


「・・・え?」


「私と同じ大学に来たら、私が先輩としていびってあげるから」


「いびるって・・・さ、小姫さんだってぼっちになるかもしれないー、じゃないですか」


 こんな口調でそうそう簡単に友達ができるとは思えない。


「私が友達できないなんて絶対あり得ない、だって私、可愛いから」


「は・・・?」


「自分のことを可愛いと思ってる女は可愛い女と群れたがるの、まぁ私にはその習性はないけど、だから私がぼっちになることは絶対無いかな」


 小姫さんはそれほどに自信があるらしい。

 ・・・見た目だけの可愛さで言うならそれを否定できないのが本当に悔しい。

 見た目だけなら・・・!


「だから、私も進学予定だから、私と一緒の大学に来たらって」


「小姫さんと同じ大学・・・」


 別にそんなに深く追求することでは無いだろうが、聞いておくともしかしたら今後何かで得をするかもしれない。


「小姫さんって、頭の良さはどのぐらい・・・?」


「この前あった夏の全国模試で」


「・・・全国模試で?」


「七位だった」


「な、七位・・・!?」


 な、なんでみんなこんなに頭が良いんだ・・・!?

 むしろ俺が頭が悪いとすら考えられてきた。

 いやいやいや、基本的には平均ぐらいだったはずだ・・・数学以外は。

 とにかく、俺がおかしいのではなく俺の周りが異常なんだ。


「別に勉強できるなんて私の中じゃなんのブランドにもならないよ」


「・・・まぁ、でもそんなに頭が良い小姫さんと同じ大学に俺が行けるとは思えないし、俺はのんびりと進路を考えます」


「えっ」


 そもそも俺は大学に行けるかどうかが怪しいんだ、どうにかして霧響か初音の両方・・・は無理でもせめてどっちかだけは説得しないといけない。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


「ん?」


「わ、私との大学ライフの話は・・・?」


「そんな話してましたっけ?」


「ぇ?わ、私と一緒にサークルで楽しくするんじゃないの・・・?」


「だからそんな話してなかったですよね?」


「ぅっ・・・ぅわああぁぁぁぁん!!」


「ちょっ・・・!?」


 小姫さんは何故か泣きながら俺の前から足早に去って行った。

 ・・・俺のせい、なのか?

 よく分からないけど後で謝っておこう。

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