第722話命令の命令
俺は脱兎の如く地獄から抜け出し、自分の部屋に戻るべく自分の部屋のドアを開けた。
「は?過去のそーくんと今のそーくん、どっちが大事かも分からないの?」
「過去あっての今でしょ?それに過去とは言えそーちゃんを否定するなんて、本当にそーちゃんが好きならそんなことしないと思うけど?」
俺は開けたドアをそっと閉めた。
そうだった、初音と結愛はまだ言いたいことがたくさんあるからって俺の部屋で口論してたんだった・・・
「・・・ん?」
どうしよう、自分の家のはずなのに本当に休まれるところが一つもない。
このままじゃ俺は日常生活の疲れのせいで労死してしまう。
俺が自分の部屋の前でどうするかと考えていたところ、トイレからある人が出てきた。
「えっ、あんたもしかして私がトイレから出てくるの出待ちしてたの?キモすぎて吐きそうなんだけど」
小姫さんはトイレから出てきたはずがまたトレイの中に逆戻りしようとする。
「ま、待ってくれ!違う!」
大体トイレからはまぁまぁ離れてたのになんでそんなことを言われないといけないんだ。
「・・・じゃあ何」
「何って・・・」
・・・こんなことがあるのだろうか。
今現在、おそらく一番落ち着けるところは小姫さんといることだ。
霧響とあゆは今兄妹論について話し合っているし、初音と結愛は俺の幼少期時代について話し合っている。
天銀は別に普通に話はできるだろうが、まださっきのことが尾を引いている可能性があるため何が起こるかわからない。
よって普段なら絶対にそんなことになり得ないだろうが、今現在は小姫さんといることが一番落ち着いていられると言える。
「あんた今すごく失礼なこと考えてない?」
「か、考えてないです」
「はぁ・・・まぁ良いけど、それで?私と話したいの?」
「・・・・・・」
「私と話したいなら私に君と話したいって言ってって君が私に命令して?」
「・・・え?」
えーっと・・・?
私と話したいなら私に君と・・・小姫さんと話したいなら小姫さんに俺と話したいって言ってって俺が私?
「な、なんて・・・?」
長すぎて聞き取れるわけがなかった。
「だから、私と話したいなら」
「小姫さんと話したいなら?」
「私に、君と話したいって言ってって」
「小姫さんに俺と話したいって言ってって・・・?」
「君が私に命令して」
「俺が小姫さんに命令して」
「うん」
・・・うん?
つまり小姫さんが俺に話を求めるように俺が命令しろってことなのか?
・・・分からないけどとりあえずやってみよう。
「お、俺と話したいって言ってください」
「・・・・・・」
小姫さんは何故か不満そうだ。
「私、命令って言ったよね?」
「え・・・?」
「命令って意味わかってる?」
「あ、え、えーっと・・・」
命令・・・命令か。
語気を強くしろってことか・・・?
「俺と話したいって言え、小姫さ────小姫」
危ない・・・さん付けで呼んだらどうせまた怒られ──────
「君と話したいですぅぅぅぅぅぅぅ、私と話してぇぇぇぇぇ」
「・・・・・・」
未だに小姫さんのことが全然分からないが、一先ず今は心の安らぎを求めるために小姫さんと落ち着いて話をすることにした。
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