第721話二人だけの兄妹
「私、政治家になります!」
「は・・・?」
とりあえず霧響を家に上げてリビングの椅子に座ってもらうと、突然そんなことを言い出した。
「な、何言ってるんだ?霧響?」
「私が政治家になって兄妹婚を法律的に可能とするんです!」
「ほほぉ〜」
あゆは何故か感心している。
だが俺はそんな場合ではない。
「そ、そんなことできるわけないだろ?法律を変えるなんて、どれだけの支持が必要・・・いやそれだけじゃない、他にも色々と大変なはずだ」
「お兄様と婚約できるならそんなもの大変の内にも入りませんよ、それに、お兄様が思ってる以上に事はもっと簡単です」
「え?」
「支持数なんてものはお金でどうにかなりますし、その他の問題も大抵お金があればなんとかなるんです」
我が妹は一体どこでこんなに捻じ曲がってしまったんだ。
「・・・仮に本当に法律が変わったとしても、俺の気持ち的に霧響と婚約する気にはなれないと思うんだが、それはどうなんだ?」
「そんなのはお兄様の婚姻の印を偽造してこちらで勝手に済ませれば良いだけのことです」
「そ、そんなことを本当にするって言うのか?」
「お兄様が私と婚約してくださらないのであれば」
「・・・・・・」
舐めていた・・・という表現は間違っているのかもしれないが、まさか本気でそこまでのことを考えるなんて。
どうする、ここは霧響の兄としてそんなことは間違っていると言うべきなんだろうが・・・なんて声をかければ良いのか、その正解が見つからない。
「妹ちゃ〜ん、あんまり先輩のこと虐めないでくれる〜?」
俺が返答に迷っていたところ、あゆが口を挟んできた。
「あゆさんは少し静かにしていてください、これは兄妹のお話です」
「じゃあ私も先輩の名誉妹だから混ざってもいっか〜♪」
「め、名誉妹・・・?」
な、なんだ?名誉妹って・・・
「ふざけないでください!妹でいることになんの覚悟もないあゆさんがお兄様の妹を名乗るなんて・・・お兄様の妹は私だけです!」
確かにあゆが妹を名乗るのはおかしいにしても覚悟を持って妹でいる霧響も霧響で俺視点では大分おかしい気がする。
「あ、じゃあお姉ちゃんになろっかな〜?」
「お兄様の兄妹は私だけです!恋人の座だけでなく兄妹の座まで狙おうとするとは・・・本当に愚か極まりないですね」
「別に一人ぐらい増えても良くな〜い?」
「良くないです!お兄様と私は生まれた時から二人なんです!・・・そう、恋人等は別れたりすることがあるかもしれませんが、私とお兄様は離れることが概念的に無いんです、何故ならたった二人の兄妹ですから!」
霧響は俺にも言い聞かせるように言う。
・・・たった二人の兄妹、そう、だからこそ俺は尚更霧響と婚約なんてするわけにはいかないんだ。
「良いなぁ〜、そんな風に兄妹愛があって〜、私なんて一人っ子だからそう言うの全然触れてこなくって〜」
「兄妹・・・愛?」
「ん〜?」
「そんなものと一緒にしないでください!私は兄弟としてではなく異性としてお兄様を愛しているんです!」
「一緒一緒〜」
「一緒じゃありません!」
なるほど、ここが地獄だったらしい。
神様、俺が一体何をしたって言うんだ・・・
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