第720話裸論争

 俺と天銀はそれぞれ着替え終えると、一緒に脱衣所から出た。

 流石にそろそろ料理し終えてるかと思い、リビングに向かうと。

 案の定リビングのテーブルの上には料理が彩られていた。


「あっ、そーくん!」


「あっ、そーちゃん!・・・きゃぁ〜!」


 初音と結愛が俺と天銀がお風呂から上がってきたことに気づいたらしいが、なぜか結愛は悲鳴を上げた。


「ど、どうした!?」


「そ、そーちゃんのお風呂上がり姿が色っぽすぎて・・・」


「は、は?」


「ふんっ、これだからそーくんアマチュアは・・・」


「なっ・・・!そっちなんてそーちゃんの幼少期の裸も見たことないくせにっ!」


「そ、そーくんの幼少期の裸・・・?」


 ちょっと待て、そこから先に俺にとって良い話は絶対に無い気がするからやめていただきたいところだ。


「はぁ、今や見ることのできないそーちゃんの裸は、私だけの記憶の中に閉じ込めてあるの〜、私だけのそーちゃん❤︎」


 結愛がそう言うと、初音は露骨に怒った。


「は?何それ、殺されたいってこと?私以外がそーくんの何かを持ってるなんて許せないんだけど」


「お、落ち着けって初音・・・」


「落ち着けって言うなら、この女の記憶からそーくんとの過去を消すか、そーくんの幼少期の時の裸写真を今ここに持って来て」


「は、裸の写真なんてあるわけないだろ!?」


「はぁ、これだからそーくんは・・・」


 俺はこんなことで呆れられてしまうのは心外だったため、初音に聞き返してみることにした。


「・・・じゃあ初音はどうなんだ?」


「どうって?」


「自分の昔の裸の写真なんて持ってないだろ?」


「持ってるよ?」


「そうだ、俺が言いたいのは自分ができないことを俺ができないからって呆れるなんて─────え!?」


「え、何?もしかして昔の私の裸見たいってこと!?え!?それでそれで!?今の私と昔の私がどれぐらい変わったのかって言うのをじっくり検証するって言うのを口実に私の裸を見たいって話?」


「ち、違う!俺は──────」


`ピンポン`


「・・・ん」


 インターホン・・・宅配便、いや。


「ちょ、ちょっとインターホンが鳴ってるから・・・」


 俺はこの危ない空気感を逃れるために即座にインターホンのところに向かう。


「はい」


 俺が返事をすると、インターホン越しに聞こえて来たのは・・・


『お・兄・様!』


 案の定霧響の声だった。


「ど、どうした?」


『何故私のことを置いていったんですか!将来の嫁ですよ!?』


「嫁じゃない!兄妹の結婚は無理だって何度言えば──────」


『そのことなのですがお兄様、話があります』


 霧響は急に真面目な語り口調となった。


「なんだ?」


『私たちが婚約できる最も確実な方法を思いつきました』


 ・・・え?

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