第719話最悪な誤解
「さささ、最王子くん!みみみ、見えてないですよね!?」
「あ、あぁ・・・!」
正直に白状するのであれば天銀の胸の大部分が見えてしまったが、咄嗟に目を閉じたため、胸の先端の部分は見えなかった。
そして正直な感想を言うのであれば、結愛と同じか、下手したらそれ以上に大きかった。
「えぇっと・・・」
天銀は慌てた様子で背中あたりをまさぐっている。
きっとバスタオルを結んでいるんだろう。
「せんぱ〜い」
「あ、あゆ!?」
外からあゆの声が聞こえてきた。
「ど、どうした?」
「今何かすごい音が聞こえてきたんですけど大丈夫ですかぁ〜?」
「え、あ、あぁ、だ、大丈夫だ!」
「何焦ってるんですかぁ?開けますよ〜?」
「開けま・・・は!?開けますよじゃない!開けて良いわけないだろ!」
まずい・・・このままじゃ天銀の性別がバレ──────
「最王子くん、すみません・・・!」
「え?」
天銀は俺に小さく謝ると、まだバスタオルもちゃんと結べていないのに俺に正面から抱きついてきた。
「なっ・・・!?」
「すみませんすみません・・・!」
あゆは俺たちの状況など知らずにお風呂の入り口を開けた。
「わわぁ〜!もうそんなところまで発展していたんですか!?男同士の恋愛も悪くな─────」
「ち、違う!天銀は─────」
あ、危ない、そうか、もしさっきのままだったら天銀に性別がバレるから俺の方に抱きついてきて自分の正面を隠してるのか・・・
とは言えそんな状態で抱きつかれると体というか主に胸が当たりすぎて俺の理性というものが吹き飛びそうになってしまう・・・が、こんな状況には慣れたものだ、華麗に乗り越えてみせる。
「天銀先輩はぁ〜?」
「お、俺のく、首裏にあるほこりを取ってくれてるんだ」
「ほこり・・・?」
どうやら全然こんな状況には慣れていないらしい。
当然の結果だ。
・・・無理だろ!こんな状態で!
「まぁ良いですよ〜、どうぞお2人でお幸せに〜」
「あっ・・・おい!」
あゆはゆっくりどドアを閉めた。
・・・なんかとんでもない誤解をされてしまった気もするが、誤解なんてものはいつでも解けるし、今はこの窮地を脱しただけ良しとしよう。
「だ、大丈夫か?天銀」
「だ、大丈夫です・・・!」
天銀はすぐに俺から離れ、バスタオルを結び直した。
「す、すみません、お見苦しいものを・・・」
「い、いや」
口に出して言うのはもちろん、心の中で言うだけでも殺されてしまいそうだからそれを否定することができない、すまない天銀・・・
「で、では体を洗ったら出ましょうか、お互いが体を洗っている時は背中を向けるということで・・・!」
「あ、あぁ・・・!」
俺たちは各自体を洗った。
・・・心なしか天銀の声が高く早口になっていたような気もした。
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