第718話天銀とお風呂

 俺と天銀は背中合わせに着替え、今はとうとう2人でお風呂の中に足を踏み入れた。


「最王子くん、小さな疑問なのですがよろしいですか?」


「な、なんだ?」


「なぜ腰にタオルを巻いているのですか?」


「・・・は!?」


 あ、天銀は一体何を言ってるんだ・・・!?

 いや、待て。

 相手はあゆとか小姫さんじゃない、天銀だ。

 きっと何かちゃんと真面目な思惑があっての質問のはずだ。


「どういうことだ?」


 まずは聞くところからだ。


「いえ、純粋に何故かなと・・・」


「なぜって・・・こんなことを言うのはあれだけど、天銀だってバスタオルをしてるだろ?それと同じだ」


「ぼ、僕は生物的には女ですから一応バスタオルはしますよ!」


 天銀は赤裸々に言う。

 ・・・ん?


「・・・いや、その理論で言うなら男だってバスタオルはしないまでも腰にタオルはするだろ?」


「・・・はい?なぜですか?女性は体の局部を隠すためにバスタオルをしますが、男性には隠すものがないのでは?」


「え・・・?・・・え!?」


「何かおかしなことを言いましたか・・・?」


「・・・・・・」


 ・・・え。

 ・・・ん?


「いや・・・その、ちょっと聞いてもいいか?」


「はい」


「えーっと・・・だな、だ、男性と女性の体の違いって何かわかるか?」


 なんか俺がセクハラしてるみたいだが割と大事な質問だ、本当はこんな質問したくないが仕方ない。


「な、何を言うんですか・・・!」


 流石に知ってたか・・・

 天銀は恥ずかしそうに自分の手のひらに収まりきらない胸を押さえている。

 ・・・ちょっと恥ずかしがれるのはちゃんとそのぐらいは知ってるって証拠だな。


「胸の発達の有無・・・です、なぜこんなことを僕に言わせるんですか!」


「・・・え?パッと言われて思いつくのそれなのか?」


「・・・え、ほ、他にと言われましても、妊娠するとかでしょうか」


「・・・・・・」


 やめよう。

 どうやら俺が汚れていたみたいだ。

 こんなことを言葉通り純粋無垢な天銀にするのは最低だな。


「なんでもない、忘れてくれ」


「最王子くん・・・?なぜ遠い目をしているんですか?」


「良いんだ、悪かった」


「僕は謝罪を求めてるんじゃありません!僕に何か不審を抱いたならそれを教えてください」


「いや、本当になんでもないんだ」


「・・・もしや」


 天銀は何かに気づいたらしいが、なぜかその視点は俺の腰に巻いているバスタオルに向かっている。


「そのバスタオルの中に、何か見られたら困るものが?」


 こんなところで探偵力を発揮されても困る!

 っていうか普通ならそんなことに探偵力を使わなくてもわかることだ!

 勿体なさすぎる。


「そうだが・・・」


「・・・そうですか、見られて困るものを無理やり見るのはプライバシー違反ですよね」


 そう言って天銀は天銀は俺の腰回りから目を離した。


「僕だって見られたら恥ずかしいものはあります・・・し!?」


 天銀がそう言った瞬間に、バスタオルの結びが緩かったのか、天銀のバスタオルがはらりと取れてしまった。


「〜〜〜〜!!!!!」


 天銀は声にもならない声を、真っ赤な顔でお風呂中に響かせた。

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