第715話あゆとの出会い

 そう、あれはまさに秋の紅葉が木に彩っていた時期。

 先輩が・・・


「子猫ちゃん、大丈夫?」


 と私に語りかけ──────


「ちょっと待て!」


「んもぅ〜!なんですかぁ〜!せっかく私が回想に浸ろうと思ってたのにぃ〜!」


 はぁ・・・せっかく良いところなのに邪魔してぇ。


「俺がそんなこと言うわけないだろ!改変されすぎだ!」


「えぇ〜、乙女の恋愛フィルターを批判するんですかぁ?」


「恋愛フィルターなんてレベルじゃない!」


「別に良い風に改変してあげてるんですから良くないですかぁ〜?」


「良くない!っていうか俺としては正直昔話なんて今はどうでも──────」


「あ、聞いてくれないなら容赦無く落としますよ♪」


「喜んで聞かせてくれ!」


 ちょろぉ〜い。

 先輩はほんと扱いやすくて助かるなぁ〜。

 こんな先輩でもギリギリの状態になったら私の言うことを全然聞いてくれなくなるんだもんなぁ〜、変なの〜。

 

「は〜い」


 欲しがりの先輩のためにそろそろちゃんと話してあげよ〜っと。

 そう、あれは2年前の秋。

 私がまだ中学2年生の時。


「ふっ、ん〜!・・・あぁっ」


 その時私は学校の図書室で読みたい本があったけど、その本はその時の私の身長じゃ届かないところに置かれていた。

 ・・・今だったら届くけど。

 今だったら絶対届くけど!


「本棚を万人向けにしなかった本棚作者の頭と学校の事務の人間はなんでこんな高い本棚にしたの〜!」


 私が嘆いていたところ、そこに一人の男子生徒が来た。


「あ、あの」


「ん〜?」


「な、何か欲しいのがあるなら取ろうか・・・?」


 そうっ!その時はここまでゾッコンラブになるだなんて思ってもなかった先輩!まさに少女漫画のような登場の仕方〜!

 でもその時の私は・・・


「大丈夫です〜!私一人で届きますので〜!」


 先輩のことを突き放してしまう。

 今なら欲しいものがあるかなんて聞かれたら「先輩を下さい」で即答だけど、はぁ〜・・・今の記憶を過去に移せたらいいのに〜!

 その後も何度かトライしたけど届かなくて・・・


「ちょっ・・・や、やっぱり届かないんじゃ無いのか?」


「届きます〜!届きますよ〜!あいたっ!」


「危ない」


 先輩は私が倒れそうになるのを手で止めてくれた。

 ・・・今思ったら本当勿体無いことしたな〜!あぁ〜!こんなにも積極的な先輩なんてこの時が最初で最後なのに〜!


「あ、ありがとう・・・ございま〜す」


「そんな事はいい、それで、どれが欲しいんだ?」


「えーっとですね」


 私はちょっと好奇心で先輩にちょっかいをかけてみた。


「性技の基礎っていう本なんですけど〜」


 ここで私は先輩の反応を見たかった・・・けど。


「せいぎ・・・?あぁ、正義か、そんな本があるのか・・・?」


 先輩は私がちょっかいをかけているなんて疑いもせずに一生懸命に本を探してくれた。


「え!?ちょっ、う、嘘ですよ!?嘘!」


「えぇ!?」


「はぁ」


 こんな人が今時居るんだなと思った。


「そんなんじゃ将来悪い女に騙されちゃいますよ〜?」


「わ、悪い女って・・・俺に好意を抱いてくれる女性なんて全然想像できないな」


 あ〜〜〜!!

 今思ったらこの発言!!

 2年後にはこんなにも色んな女に言い寄られてるくせに〜!

 なんかムカつく〜!


「そうですかぁ〜・・・で、本当に私が欲しい本は──────」


 そして私は先輩に本を取ってもらった。


「ありがとうございます〜!」


「いや、別に良い」


「・・・あ、何年生ですかぁ?」


「3年生だ」


「じゃあ先輩ですね!」


「あぁ、今後会うことがあるか分からないけど、よろしく」


「はいっ・・・!」


 その時私は目に見えない何かを確かに感じた。

 そしてその日から私は先輩のことが気になってずっと先輩のことを追いかけ続けた。

 日が進むに連れて私は先輩に夢中になった。

 ・・・少女漫画ほどの綺麗な出会いじゃなかったけど、それでも私にとっては大事な出会い。


「とまぁ、先輩との初の出会いはこんな感じですね〜」


「あ、あゆとの出逢いにしては特に奇抜でも無いんだな」


「せんぱ〜い、それは思っても口に出さないでくださいよ〜」


「わ、悪い」


「・・・あっ!そうだ!あと先輩を追ってる時に先輩と鉢合わせして先輩に「愛してるよ、あゆ」なんて囁かれたりもしたかも〜」


「そんなわけないだろ!」


 先輩はノリが悪くすぐに否定してくる。

 いつものことだけど〜。


「・・・そう言えば俺のことを追ってたって言うのは?」


「え?ストーカーしてただけですけど」


「さらっと言うな!・・・撤回しよう、表面上は奇抜じゃなかったけど裏は奇抜なんてレベルじゃなかった」


「あはっ」


 それで、先輩と再開したのが私が先輩ならどうせメイド服でもしてれば簡単に釣れるかな〜って思ったら本当に釣れちゃって、びっくりしたな〜。


「・・・先輩ってメイド服が好きなんですかね?」


「なんの話だ?」


「ご主人様〜❤︎」


「やめろ!」


 私と先輩は2人きりのベランダでイチャイチャした。

 こういうのを相思相愛って言うのかな〜♪

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