第714話耳の痛い話

「先輩の癖に生意気ですね」


「あ、あゆにそんなことを言われる筋合いは無い・・・!」


「へぇ〜❤︎先輩も随分成長したんですね〜!嬉しいです〜♪」


「・・・・・・」


 無視だ無視、そうだ、細かいことにいちいち反応を示すからあゆが喜ぶんだ。

 こう言うのは無視して行こう。


「無視なんて酷いですよー!せんぱぁ〜い!・・・そんな先輩ならそろそろ浮気できるぐらいの胆力もあるんじゃないですかぁ?」


「ぁっ!?そんなわけないだろ・・・?」


「・・・んー?」


 あゆは口元に手を添え顔を傾けた。


「何そんなに驚いてるんですかぁ?」


「な、何って、う、浮気なんて変なこと言うから驚いただけだ」


「ふ〜ん?なぁ〜んだ、もしもう先輩が誰かと浮気してるなら、ついでに私も〜って思っちゃいましたけど、まぁ先輩が浮気なんて最低で人間の恥みたいなことするわけないですよね〜」


 前までならなんとも思わなかったけど今は状況が違う。

 心の抉れ方がえげつないとでも表現しておこう・・・


「もちろん・・・」


「・・・・・・」


「そ、そう言えば今更だが、あゆまで学校休んでて大丈夫なのか?」


「え〜?先輩だってもうほとんど足治ってるのに学校行ってないじゃないですかぁ?わ〜るいんだ〜わ〜るいんだ〜」


 またも耳の痛いことを連発されてしまう。


「・・・・・・」


「せんぱぁ〜い、さっきから黙ってばっかりじゃないですかぁ〜」


「そんなに耳の痛いことを言われたら黙っても仕方ないだろ・・・?」


「そうですね〜♪で、先輩!いつ私のことも先輩のご実家に連れて行ってくれるんですかっ?」


「・・・え?」


「え?じゃないですよ〜、白雪先輩たちのことを連れて行ったんだから、当然私のことも連れてってくれるんですよね〜?」


 冗談じゃない。

 初音と結愛だけでもあんなに大変だったのにあゆまで連れて行ったらそれはもう大変なんてレベルじゃなく厄災レベルだ。


「いや・・・その、べ、別にあゆを俺の実家に連れて行く意味は無いだろ?」


「え〜?意味しかないですよ〜、先輩の初めてを貰った女として紹介していただかないと♪」


「まだ何もしてないだろ!」


「まだってことはぁ〜?将来的にはぁ〜?する予定がぁ〜?」


「無い!」


「あるってことですね〜!」


 あゆは俺側が言い間違えてしまったのかと思うほどはっきりと言う。


「はぁ〜それにしても」


 あゆは俺の腕を組んだ。

 振り解いても良いけどあゆの性格上ここで振り解けばそれ以上のことでやり返そうとしてきそうなため、ここは我慢する。


「2年前は妄想することしかできなかった、先輩と肌を触れ合わせることができるなんて〜!」


「2年前・・・?あ、あー、中学の時に会ってたとか会ってなかったとか・・・?」


 あんまり気にしてなかったけどあれは本当だったのか。


「え〜!まだ覚えてないんですかぁ?そろそろ忘れん坊な先輩のためにおさらいしてあげますよ〜、あれは落ち葉舞う秋の────────」

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