第709話お別れ
あの後俺と初音は支度をし、部屋を出てリビングに向かうと結愛が母さんと会話していた。
どうやら昨日は毛布だけだったけど、特に体調に支障は出ていないようだ。
よかった。
「そーちゃんのお母さん!短い間でしたがお世話になりました」
「ううん、全然大丈夫だよ〜!いつでも来てね〜!」
「あ〜!お母様〜!」
ぱっと見で気づかなかったが、どうやら霧響も母さんの後ろに居たらしい。
「きーちゃん〜?まだ拗ねてるの〜?」
「拗ねてるのじゃ無いですよ!!」
拗ねる・・・?何の話だろうか。
「なんで昨日私のことを無理やりこの家から追い出すように外泊に連れて行ったんですか!せっかく私とお兄様が生まれ育った地で夜を共にしてそれから────と色々考えてましたのにっ!!」
霧響はよく分からないことをその口から流れるように綴った。
「もう〜、いつも言ってるけどね?きーちゃんにまだそう言うことは早いの、まだ中学生なんだから」
「それを私は2年ほど前から言われています!2年前も今も中学生ですが中学1年生と3年生とでは天と地ほどの差があります!もう来年には私だってお兄様と同じ高校生になるんです!!」
「ん〜、そうだね〜、そう言うのはきーちゃんが高校生になってからかな〜」
「小学生の時にも中学生になってからと言われました!」
そもそも小学生の時から俺と婚約がどうのとか言ってたことに俺は驚きを隠せない。
小学生の時なんて本当に俺が何も考えてなかった時だ。
そんな時から霧響はそんなことを考えてたのか・・・昔婚約の約束をしたことを忘れずに。
・・・今更ながら罪悪感が芽生えてきた。
って、いやいや、兄妹で結婚するなんて考えの方がおかしいって言うのは今となっては普通のことだ、罪悪感を覚える必要は無い・・・はず。
「まぁ・・・てへっ?」
「てへじゃないです!根本から究明してください!」
霧響はまだまだ言いたいことがあると言うような表情で母さんに文字通りたたみ掛けている。
そこに初音も混ざって母さんに話しかけていた。
きっとお礼でも言っているんだろう。
「そーちゃん」
結愛も母さんに続いてお礼でも言うのかと思っていたら、結愛から話しかけてきた。
「ん?」
「ここが私たちの最初だからね」
「最初・・・?」
「あんな虫なんかに紛らわされず、ここでの私たちの思い出を元にして将来一緒に幸せになろうね」
「・・・・・・」
それにはまだ俺は返答することができない。
いや、返答する権利がないだろう。
今は形的に浮気中の俺には・・・
「明くん」
母さんは初音と話終わったのか、俺の方に来た。
「明くんは幸せ者だねっ!こんな可愛い女の子2人に言い寄られるなんて〜!」
「あ〜、あぁ・・・」
家に帰るとあゆもいるけど・・・そのことはわざわざ言う必要は無いだろう。
そんなことをしても本当に文字通り自分の首を絞めるだけだし。
「頑張ってね!応援してるからっ!」
「あ、ありが────・・・あれ?」
俺はそこで昨日と同じように気づく。
「父さんは帰ってきてないのか・・・?」
「明くん?帰りは気をつけてね〜」
「えっ、ちょっ・・・」
初音と結愛は俺についてくる形で、俺は追い出される形で家から出た。
・・・まぁ多分仕事とか何かだろう。
俺はそう自分に言い聞かせ、初音たちと一緒に家に帰った。
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