第692話結愛の煽り

「・・・はぁ、今のでちょっと機嫌悪くなっちゃったけど、今元々機嫌良かったし、許してあげる」


「そ、そうか・・・」


「うん・・・じゃっ、出てって」


「・・・え?」


「あ、そーくんに行ったんじゃなくて、この女に言ったの」


 どうやら初音としては結愛に出て行って欲しいらしい。

 わかってはいたことだけど、最近はちょっとその辺は甘くなったと思ってたのにな・・・いや、リビングの時は母さんとかが居たから表に出してなかっただけか。


「嫌」


「は?これから私とそーくんはそーくんの実家初夜2人きりっていう重要すぎるイベントがあるから、私とそーくん以外の生物がいたら邪魔なんだけど」


 やばい、やばい・・・ここで結愛が言い返したらまた空気が凍ったように様変わりしてしまう。


「ふ〜ん、わかった」


 ・・・え?

 わ、わかった・・・?

 い、意外と飲み込みが良いというか・・・まぁ空気が凍らないに越したことは無いんだが。


「確かに、虫この家に来るのも初めてでそーちゃんとこの家にお泊まりするのも初めてなんだもんね〜、私は昔何回も何十回も何百回もこの部屋でそーちゃんと2人っきりで遊んだり眠ったりしたけど〜、虫は初めてなんだもんね〜、あっ、そういえば一つのお布団の中で一緒に寝たこともあったかな〜?うんうん、初めてならそんなに浮かれちゃっても仕方ないね」


 と言い残し部屋を出ようとする結愛を・・・


「・・・は?何それ」


 初音が引き止める。


「え、なに?私空気利かせて今出て行こうとしてあげてたんだけど」


「いやいや、散々煽っといてそれで許されると思ってるの?」


「え?私何か間違ったこと言ったかな?」


 これまた結愛は煽るように言う。


「・・・まぁいいや、強がって私のこと煽ったところで、今日私がそーくんと夜を迎えることは決まってるしね」


「うん、そうだね、私は当たり前みたいにそーちゃんとここで何回も寝たこともあったりしたけど、虫は初めてなんだから、浮かれちゃってもしょうがないよね」


「・・・・・・」


 結愛は最後にもう一押し初音のことを煽った後、この部屋を後にした。

 ─────直後。


「あ〜!あの女っ!!」


 初音は怒声を上げた。


「は、初音、落ち着い─────」


「ん!・・・何?」


「なんでもない、です・・・」


 俺が初音を宥めようとした瞬間、初音は怒ったように切り返してきたため、俺はすぐに屈服する。

 強者にはしっかりと屈服する、俺が弱肉強食の世界で学んだことだ。


「・・・はぁ〜あ、なんか気分下がっちゃったけど、別に良いよね」


「・・・え?」


「これからお楽しみの時間なんだから♪」

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