第690話結愛と恋人
その後、俺と初音は共にお風呂から出た。
本当なら初音が出た後で俺が出たかったところだが、俺の頭がぼーっとしてきて俺が限界になり、初音が俺と一緒にお風呂から出たため、タイミングが合わさってしまった。
誰もここには来ないでくれ・・・頼む!
「そーくん、その下着・・・今日お泊まりする可能性も考慮して、私が持ってきてあげたの」
「あ、あぁ、ありがとう」
普段の初音ならこんな小さなことで感謝なんて求めて来なかっただろうが、ついさっき珍しく俺に負かされたことが影響しているんだろう。
もしかしたら最低なのかもしれないが、俺は久しぶりに初音に勝利・・・というか男としての尊厳を保てた気がして少し気分が良かった。
「はぁ・・・まぁいっか、そーくんの言質も取れたしね」
「・・・言質?」
俺は極力初音の方を見ないように見ないようにと心がけ、着替え終えるとすぐに脱衣所を後にした。
やっぱり着替えの早さに関しては男の俺の方が早い。
すぐに髪を乾かしお風呂上がりのアイスという至福の時間を味わうためにリビングへに行く。
「あっ!そーちゃん!」
リビングにいた結愛から声がかかる。
「どこか行ってたの?」
「え、えぇ?あー、ちょ、ちょっと趣味の散歩にな・・・?」
「そーちゃん散歩なんて趣味じゃ無いよね?」
「き、気分的にちょっと散歩したくなっただけだ」
俺は誤魔化しを入れる。
・・・それにしても、リビングには結愛しかいない。
他の3人はどこに行ったんだ?
「ふ〜ん・・・ねぇ、そーちゃん、今周りに誰もいないから改めて聞くけど、私たちって今は恋人同士なんだよね?」
「あ、あぁ」
「じゃあ恋人らしいこと、しよ?」
「こ、恋人らしいことって・・・?」
ま、まさか子供作りとか言い出さないよな・・・
浮気してるってだけでも最低なのに初音とお風呂に入った後で結愛とそんなことをするなんていよいよ弁解の余地のないクズになってしまう。
「あ、勘違いしないでね?私はあんな虫みたいに無理やりそーちゃんを・・・なんてことをするつもりは全くないの」
「え・・・?」
「ただ普通に、トランプしたりとか映画見たりとか、そーちゃんが大好きなテレビゲームをしてみるとか、なんでも良いよっ!」
「そ、そうなのか・・・?」
「うんっ!もちろんそーちゃんがそういうことをしたいって言うんなら・・・受け入れるからっ!」
「えっ、い、いやいやいや!ぜ、全然普通で良い!」
いつも強引に俺の貞操を脅かそうとしてくる時の結愛と人格が違いすぎて俺は動揺している。
「うん・・・もしそーちゃんが勘違いしてるならその勘違いを正して欲しいから言うけど、私はあんな虫みたいにそーちゃんの合意を無視してえっちなことしたり子供を作ったりなんてしたくないの」
「で、でもいつも──────」
「今までは!そーちゃんが私のこと恋人だって受け入れてくれなかったから強引な手に出るしかなかっただけ!本当なら私だってそーちゃんにあんなことしたくなかったよ・・・」
結愛は哀しそうな顔で言った。
「そ、そうか・・・」
「うん」
俺と結愛は、誰もいないリビングでそんな話を終えた。
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