第687話向かい合う

「じゃあ、まずは最低ラインからやるってことで良いよね?」


 初音はそう一方的に言うと、バスタオルを脱ぎ捨てた。


「あっ・・・」


 さっきの寝ていた体勢とは違い、今はしっかりと立っているため初音のことがしっかりと見えている。

 つまり、初音が今バスタオルを取ったら、ちゃんと俺にはその裸が見えると言うことだ。


「そーくんもっ!」


 と言う声をお風呂場に響かせると、初音は俺の腰に巻かれていたタオルをも下にずり落とした。

 ・・・って!いつの間にこんな格好になってたんだ!?

 元からタオルなんて履いてなく、ちゃんと下着を履いてたはずだ。

 そうなると・・・初音が俺の下着を脱がしてこれを履かせたのか!?

 ・・・つまり、俺が寝てる間に見られ・・・


「あぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺はとりあえずすぐにしゃがみ自分の露になった局部を手で覆い隠そうとするも・・・


「ちょん切るよ?」


「ちょんぎ・・・?」


「早く立たないと、ちょん切るよ?」


「ひっ」


 俺は何をちょん切るつもりなのかは知らないが、明らかに嫌な予感しかしなかったためすぐに立ち上がる。


「手」


「・・・・・・」


「手、どけて?自分の立場わかってるの?私に嘘ついたんだよ?」


 俺はちょっと嘘をついただけで合意もなく気絶させられ合意もなくお風呂場に連れ込まれ無理やり裸を露にされようとしている。

 確かに嘘をついたのは悪かったがここまでされる筋合いは絶対にないはずだ。

 なんてことを口に出して言う勇気は無いため、俺は抵抗することなくゆっくりと手を横へ横へとどける。

 いずれそれは露わになり。


「そーくんのはいつ見ても可愛────逞しいねっ!」


 そういう小さい一言が男を傷つけることを忘れないで欲しい。


「・・・・・・」


 っていうか本当に世のカップルたちのメンタル力が怖すぎる。

 よく恋人だからとはいえ他人の目の前に裸を見せるなんていう行為ができるな・・・正気じゃない。


「でっ!そーくんもヤる気になってくれたわけだけどっ!」


 やる気になってるのは初音だけだ。


「まずはやっぱりさっき私が言った最低ラインから順序立ててやっていく?」


 順序立てていくは良いとしてもスタートラインがキスをしながら裸を弄る、なんていう時点で初心者コースじゃない、どう考えても上級者向けだ。


「そう、だな・・・」


「わかったっ!じゃあ・・・お願いしても良いかな?」


 初音は無邪気な笑顔で俺に身を委ねる感じの雰囲気を出してきた。

 ・・・本当に普段は鋭く俺の思考を読んでくるのにこういう時だけその鋭さが発揮しないのはなんでなんだ、今でこそ発動してくれ。

 俺は心の中では呻きながらも、仕方なく初音の唇に自分の口を近づけ。

 ─────キスをする。


「んっ❤︎」

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