第683話母さんの隠し味
「ごほっごほっ!」
「咳・・・?」
少し離れたところから咳をする声が聞こえてきた。
それは、少し離れたところで母さんの料理を食べている父さんの咳声だった。
「み、御子響!変なの入れないでくれっていつもお願いしてるよな!?」
「変なのなんて入れてないよ〜?」
「だったらこのジャリッみたいな感覚はなんなんだ!」
「え?ん〜、お父さんの歯が砕けちゃったんじゃない?」
「ご飯を食べてるだけで歯が砕けてたまるか!」
どうやら母さんの作った料理が父さんの口に合わなかったらしい。
「・・・じゃあ私が作ったこのお料理、食べないの?」
「えっ・・・」
「お腹が空いてるお父さんのために、私が精一杯愛情を込めて作ったお料理・・・食べないの?」
「そ、そうは言ってない、もちろん食べる」
「そうだよねっ!ちょっと隠し味が気に入らないってだけで私の愛情を無碍にするなんてことするわけないもんね〜!」
隠し味か、きっと母さんのことだからふざけてしょうがでも入れたんだろうな。
「あ、あぁ、もちろんだ」
父さんは口ではそう言っているが、お箸は一向に進んでいない。
「・・・あっ!わかったよ〜?お父さん」
「・・・え?」
母さんは何かがわかったらしく、父さんのお箸を手に持ち、そのお箸で料理を挟んで。
「はい、あ〜ん❤︎」
「んぐっ!?」
その料理を口に入れた瞬間、父さんの顔はみるみる青くなっていき。
「ちょちょ、ちょっとトイレに行ってくる!」
父さんはその料理を飲み込むと、急いで立ち上がってトイレへと向かった。
「もう〜、何年経っても照れ屋だね〜♪」
絶対に照れてるとかではないと思うんだけどな・・・
「ひゃ〜っ!」
隣でそのやりとりの一部始終を見ていたらしい初音が、またも感嘆の声を上げている。
「私とそーくんも将来あんな感じになるのかなっ!今から楽しみだよ〜!ねっ!そーくんっ!」
「え?あ、あぁ」
絶対にあんな風にはなりたくないな・・・
「きゃ〜っ!」
・・・ん?
「私とそーちゃんも、将来はあんな感じになるんだね〜!理想の夫婦を目指して頑張ろうね、そーちゃんっ!」
「は、はは・・・」
結愛もなぜかあの2人の関係に憧れてしまっているらしい。
「私とお兄様は、もう少し上品な関係になりたいです・・・ね、お兄様?」
「そ、そうだな?上品な、兄妹関係な?」
「何をおっしゃられてるんですか?上品な夫婦関係に決まってるじゃないですか」
なんとかお茶を濁してみようと思ったが、どうやらそこだけは譲れないらしい。
・・・上品な夫婦関係ってどんな夫婦だよ。
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