第672話初音の嘘泣き

「っっっっっっっっっ!」


 た、耐えるんだ俺・・・!

 体を委ねるなんて、駄目に決まってるだろ・・・!!


「・・・何を意味の無い抵抗してるの?」


 俺は必死に歯軋りをして何をしても大丈夫なように身構えていたが、初音にそれを意味の無い抵抗で片付けられてしまう。


「前にも言ったけど、この前そーくんがあとちょっとでも快楽に耐性があれば今頃私たちはもう初めてを終えてるんだよ?」


「あ、あの時はどうかしてたんだ」


「どうかしてた、なんていう理由で私の初めてを奪おうとしたの?」


「えっ・・・」


 う、奪うも何もほとんど初音から誘惑してきたようなもの・・・仮にあの時に俺が初音と初めてを遂げていたとしてもその表現に俺が初音の初めてを奪った、なんていう表現は絶対に正しくない。


「う、奪おうとなんてしてないだろ?」


「どんな形であれ初めてを遂げられたら奪われたになるのっ・・・!その表現は捧げたでもあげたでもなんでも良いけどっ・・・!とにかく私が伝えたいのは、初めては女の子にとって本当に大事ってことなのっ・・・!」


 初音は突如泣きながら俺の体に顔を埋め体も俺に預けてきた。


「えっ、あ、いや、そ、その・・・」


 突如こんなことをされると、いくら非日常に慣れている俺と言っても困惑の一つや二つはしてしまう。


「あの時私の初めてを奪おうとしたのにっ!今更できないってなんなのっ・・・!?うぅぅぅぅ・・・」


 や、やめてくれ、そんな風に泣かれると・・・


「そーくんはぁ、一度私の初めてを奪おうとして期待させてその気にさせたのに・・・本当になんの責任も取らないつもりなの?」


「せ、責任・・・?」


「私の裸と秘密の場所まで見て・・・その責任を取らないつもりなの?」


「そ、それは・・・で、でも──────」


「うわぁぁぁぁぁぁぁん」


 俺が反論しようとすると、初音は部屋中に響き渡るような声で泣き喚いた。

 お、俺は・・・俺は、どうすれば良いんだ!


「は、初音、お、落ち着いてくれ・・・」


「ひっ、うっ、うぅぅ」


 ここまで泣かれてしまうともう・・・俺に選択肢は無いな。


「・・・わかった」


「わかったぁって、何がわかったのぉ・・・?」


「・・・責任を、取る」


「・・・ほんと?」


「・・・あぁ」


 ここまで恋人を泣かせてしまって責任を取らないのかとまで迫られてしまって何もしない方がおかしい・・・いや、それこそ最低だ。


「・・・じゃぁ、私が今から手錠を解いたらぁ、そーくんからっ、うっ・・・シてくれるのぉ・・・?」


「・・・あぁ」


「わかったよぉ・・・ふふっ」


 俺がそう返答すると、初音は改めて手錠の鍵を取り出して俺の両手足の拘束を解く。


「・・・じゃ、じゃあ、初音───────」

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