第669話自白剤

「っ・・・んん?」


 あれ・・・?

 ・・・ん?

 俺どうしてたんだっけ・・・?


「目が覚めたみたいだね、そーくん」


「え・・・?」


 目の前には初音がいて、背中には心地の良い感触。

 そして両手足が動かない違和感。


「・・・・・・」


 俺は全てを察してしまう。

 ・・・でも口が塞がれてないだけマシか。

 ・・・って!何を考えてるんだ俺は!口が塞がれてなくても体が縛られてたら最悪だろ!

 俺は自分の感覚が鈍っていることにショックを受けつつ、初音に質問をする。


「は、初音、な、なんでこんなことを・・・?」


「理由ならそーくんが一番わかってるはずだよね?」


「え・・・」


 も、もしかして・・・も、もうバレたのか!?

 結愛と浮気したことが!?


「・・・・・・」


 い、いや、落ち着け、そんなはずない。

 まだミスというミスをしたのは強いていうなら結愛にメールじゃなくて口で返答しようとしたことぐらいだけど、流石の初音でもあれだけで俺と結愛が浮気したことまではわからないはず・・・!


「私には全部わかってるからね、今自分から素直に言えばちょっとは反省の余地ありってことで許してあげるけど、もし言わなかったら・・・わかってるよね?」


「っ・・・」


 は、初音には本当にバレてるのか・・・?

 もし本当にバレてるならここで潔く自分から言ったほうが良い・・・でも。


「な、なんのことだ?べ、別に何も心当たりがない」


 こんなことで挫けるようなら最初から浮気なんてしていない・・・!

 流石の俺でも浮気することの意味ぐらいはわかっている、それと浮気した後のことを天秤にかけて決断したんだ。

 まだ何も得られてないのに挫けたら、それは本当のただの最悪なやつになってしまう。


「隠すの?」


「か、隠すも何も・・・本当に心当たりがないんだ」


「・・・ふ〜ん、ならちょっとお注射するしかないかな〜?」


 すると初音はまたもどこから入手してきたのか注射器を出した。


「まま、待て」


「因みに、中に入ってるのは自白剤だよ?・・・はぁ、そーくんが正直に言ってくれれば、こんな面倒なことするまでもなかったのにね」


 ・・・自白剤ってことは、初音はやっぱり俺が何を隠してるまでかは知らない、つまりさっきのはブラフってことか。

 あ、危なかった・・・


「ま、待て、自白剤って・・・」


「あ、大丈夫だよ?これは弱い自白剤だから中毒になるとか廃人になるとかはないし・・・でも、ちょっと正常な判断はできなくなっちゃう、かな?」


「やや、やばいだろそれは!っていうかなんでそんな薬を持ってるんだ!?」


「ん?調合しただけだよ?」


 ちょ、調合・・・?


「ちょ、調合って・・・そ、そんなの、薬剤師さんとかがするやつじゃないのか?」


「んー、大学に入れてないから資格を持ってないってだけで、調合の勉強はもうすでに終わってるの」


 本当に頭が良いことはわかった、頼むからその才能をもっと別のことに使ってくれ。


「じゃあそーくん、お注射するよー」


「まま、待て待て!ほ、本当に何も隠してないんだ!」


「お注射したほうが早いかな?」


「ちょっ・・・と待ってくれ!?」


 ま、まずいぞ、このままじゃ・・・

 もし初音のこの自白剤がさっき初音が言っていた通りの効果があるなら本当にまずい。


「は、初音!し、信じてくれ!本当に俺は何も隠してないんだ!」


「うんうん、お注射して確かめてみようねー」


 そう言いながら初音は俺の腕に注射器を近づける。

 そして・・・


`ブシュッ`


 初音によると自白剤が入っているらしい注射器を、俺の腕に注入した。

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