第668話あえて無駄な話し合い
その後俺は初音に淹れてもらったお茶を口に含み。
「ありがとう」
しっかりと初音にお礼を言う。
「ううん、良いよ」
初音はまたもそう端的に返してくる。
・・・いや、別にお礼に対して何か長々と言われても嫌だけどこんなに端的でもなんだか違和感を覚えるな。
「あっ!大変!」
母さんはそんな声と共に椅子から立ち上がる。
「明くんたちが来てすっかり舞いあがっちゃってたけど今日って日曜日だよね!?私買い物に行かないとっ!」
あ、あぁ、そうか。
そういえば母さんは基本的に日曜日に1週間分の食料を買ってたな。
すると母さんは手軽な手提げを手にもち、リビングを後にした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そして母さんがいなくなったことで演技という仮面は剥がれてしまったかのようにさっきまでの明るい雰囲気は無くなってしまった。
「ちょちょ、ちょっとトイレに行ってくる!」
俺はその空気感に耐えられなかったため、すぐにリビングから逃げ出すようにトイレへと向かう。
こ、怖すぎるだろあの空間・・・!
ー初音Partー
「・・・ねぇ」
「・・・何」
「そーくんと婚約するのは私って決まってるんだから、2人とも邪魔しないでくれる?」
私は2人の返答はわかりってるけど、それでもあえてこんな意味のない質問をする。
「は?そーちゃんが虫なんかと婚約する未来なんて決まってるわけないよね?」
「はい、お兄様は私と婚約するのでそんな未来はあり得ません」
お決まりの返答・・・
「そもそも、そーくんが私だけと恋人になってる時点で、そーくんが私以外と婚約する未来なんてあり得ないよね?例えそーくんのお母様に断られちゃったとしても、本当の最終決定を下すのはそーくんなんだから」
「それは虫が脅して恋人になっただけでしょ?」
「お兄様は照れ屋なだけで、本当は私と婚約したいと思っているんです、それが私とお兄様の運命なのですから」
・・・はぁ。
まぁこの2人がどう思ってようと、そーくんが私のことを愛し続けるのは確定事項だから関係無いんだけどね。
・・・あっ、そろそろかな。
「私ちょっと洗面所に行ってくるから、2人で可能性が全くなくて意味のない婚約話でもしてたら?」
「意味はあります!」
「うん、霧ちゃんとも色々と話し合わないとね」
私は思惑通りこの2人同士で時間稼ぎをさせることに成功し、そーくんが向かったらしいトイレに向かう。
「・・・ふふっ」
そーくんは私がお茶に入れた睡眠薬の効果でトイレの前で眠っていた。
・・・超短時間型の睡眠薬だからすぐ起きちゃうけど、私が準備をするのには十分。
そーくんに確認、しないとね・・・
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